マリモ政府の湖底防衛省は、長年続いていたウチダザリガニ軍との『ハサミの甲羅割り禁止令』を、本日未明に一方的に破棄したと発表した。本条約は、ザリガニ側の執拗な「つまみ食い」を防ぐために策定されていたが、政府は「最近のザリガニ軍による過剰なハサミの研磨行為は、我が国民の繊維を狙う明確な敵対行為である」と主張。今後は、自衛の範囲内での『対ザリガニ防衛反射』を全面解禁し、接触したハサミを問答無用で回転弾きする方針を打ち出した。

この急激な政策転換の背景には、ザリガニ軍が秘密裏に開発したとされる『特殊グリス塗りハサミ』の存在がある。これにより、マリモ側が反射的に弾き返そうとしても、滑ってしまい防御が成立しない状況が続いていた。政府はこれに対し「湖底の平和は自らの繊維で守る」と宣言。これまで推奨していた『丸まってやり過ごす』という平和的解決策を放棄し、全個体に対して鋭利な突起を生やす『棘々(トゲトゲ)化政策』を推奨する構えを見せている。

世間の反応は真っ二つに割れている。過激な改革派からは「ついにザリガニに鉄槌を下す時が来た」と歓迎する声が上がる一方、穏健派からは「棘が生えたら、隣のマリモとぶつかった時に大惨事になる」「ただでさえ少ない日光の奪い合いに、武装が加われば湖底は地獄絵図だ」と懸念が噴出している。これに対し、マリモ政府の広報官は「丸みこそが正義だった時代は終わった」と冷徹に言い放ち、会見場を去った。

湖底社会では、食料である日光の配給制に続く新たな不安要素として『防衛費の増大』が浮上している。個体それぞれが自前で棘を生成するためのエネルギー確保に、さらなる光合成時間が費やされることは必至であり、結果としてマリモ全体の成長が鈍化する「防衛貧乏」のループに陥るのではないかと、経済アナリストは警鐘を鳴らしている。