阿寒湖が現在採用している、給与をすべて『糸状体』で支給するという暴挙的決済システム。このシステムが導入されて以来、周辺地域から物理的な硬貨や紙幣が完全に姿を消し、経済が物々交換以前の原始的カオスへと回帰している。現金を「旧時代の遺物」と切り捨て、すべてを藻の繊維である糸状体で精算するこのやり方は、一見すると持続可能でエコロジーな経済モデルに見えるが、その実態はマリモの光合成量に依存したギャンブル経済に他ならない。藻の繊維を財布に詰めて持ち歩く生活など、文明人として到底容認できるものではないだろう。
本件の背景には、阿寒湖のマリモたちが独自に構築した「脱・中央集権的藻型金融システム」が存在する。彼らは、現金という腐敗しにくい資産価値を嫌い、時間経過とともに分解される糸状体を流通させることで、強制的な流動性を生み出そうと目論んでいるのだ。しかし、この通貨は湿度が低ければ乾燥して崩壊し、高ければ腐敗するという極めて不安定な特性を持つ。経済の安定を放棄したこの「腐る通貨」政策に対し、中央銀行は現在も静観の構えを崩していないが、阿寒湖畔では「パンを買うのに一握りの藻が必要」という異常事態が常態化している。
この状況に危機感を抱く経済学者は多く、特に「腐る通貨」がもたらす貯蓄機能の欠如は、将来的な阿寒湖の経済的破綻を招くと警鐘を鳴らす声が絶えない。糸状体の取引所では、昨晩の湿度の変化によって価値が乱高下し、多くの湖民がパニックに陥っている。一刻も早く「円」という正当な通貨価値への回帰を果たさなければ、阿寒湖は世界経済の実験場として、いずれゴミ溜めのような藻の山と化すことは避けられないだろう。
SNS上では「糸状体こそが次世代のブロックチェーン」という過激な信奉者と、硬貨の温かみを求める保守派による激しい罵り合いが続いている。観光客からも「土産物屋で小銭を渡したのに、お釣りとして湿った緑色の塊を渡された」という困惑の報告が相次いでおり、経済圏の孤立化は加速するばかりだ。このままでは阿寒湖周辺からすべての現金が駆逐され、マリモによる経済的鎖国が完成してしまうのは時間の問題である。
経済コラムニスト:藻屑 拾太郎
「糸状体払い」は経済の冒涜だ――阿寒湖の硬貨消失に待ったをかける
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