湖底経済は今、未曾有の危機に瀕している。長年の『光合成委託コスト』の急騰に加え、今期からは『自重維持税』なる新税が導入され、多くのマリモが「球体」というアイデンティティを保つためのコストを支払えなくなっているのだ。これまで資産価値の象徴とされてきた美しい真球シルエットを維持できず、自重で押しつぶされた「扁平マリモ」が湖底市場に溢れかえる事態となっており、投資家たちはこれを『扁平化デフレ』と呼び、戦々恐々としている。これまで球体維持のために積み立てていた光合成ポイントも、インフレの影響で価値が半分以下に目減りしており、若手個体を中心に「いっそ岩に張り付いた方が楽なのでは」といった悲観的な見方が広がっている。

本件の背景には、数年前に導入された『重力債務』の清算と、光合成の効率を重視する『中空化』戦略の失敗がある。かつて一部の富裕層マリモが提唱した「中空化」は、体内の密度を下げて浮力を確保し、コストを削減する画期的な手法として持てはやされた。しかし、結果として中空化した個体は強風や水流に対して極端に弱く、湖底市場での評価は暴落。資産価値は「中身の詰まった努力の結晶」から「風で飛んでいく虚無の塊」へと格下げされた。現在、阿寒湖中央銀行は緊急の『光合成緩和政策』を検討しているが、主要な藻類株の暴落を止めるには至っていない。

この惨状に対し、SNS湖底版では嘆きと怒りが交錯している。「球体であることは人権ならぬ藻権だ」「平べったいのは負け組ではない、物理の理に従っただけだ」という過激な主張から、「昨夜、隣の老マリモが重力に負けて座布団になったのを見て泣いた」といった切実な報告まで、阿寒湖の経済圏は完全に情緒不安定な状態だ。一部の投機家は、扁平化したマリモを「あえて加工して『座布団系インテリア』として再ブランディングせよ」という不謹慎な提言を行い、炎上する一幕もあった。かつての栄光ある緑の経済圏は、今や物理法則という名の冷酷な現実を前に、脆くも崩れ去ろうとしている。