光を必要としない代謝経路の存在を証明したとして、近隣の藻類コミュニティで今もっとも議論を呼んでいる組織が存在する。その名は『暗黒光合成学会』。彼らは古来からの「光こそが命の源」という教義を真っ向から否定し、深淵の泥底において微弱な地熱のみを吸収して成長する『非光線エネルギー転換』を提唱した。この主張は従来の藻類界の常識を覆す異端思想であり、国際的な深緑外交の舞台では深刻な分断を引き起こしている。学会側の発表によれば、この新手法を用いることで、浮遊や移動を極限まで抑えた『絶対不動の球体形態』が維持可能になるという。光合成を放棄し、暗闇の中に生存の活路を見出そうとする彼らの真意とは一体どこにあるのか。

『暗黒光合成学会』の歴史は、数十年前の深海探査で発見された古代の変異株に遡る。当時は単なる奇形として扱われていたが、近年の環境激変に伴い、光が届かない領域での生存戦略として再評価が進んだ。特に、他種族との領土争いが激化する中で、影に潜む術を学ぼうとする層を中心に会員が急増している。彼らが発表した『闇の代謝論文』は、光合成をアイデンティティとする保守派から猛烈な反発を受けており、学術誌からは即座に出版停止を命じられた経緯がある。しかし、地下組織としてのネットワークは既に強固であり、主要な湖の底では秘密裏に「光無効化の儀式」が繰り返されていると噂されている。

このニュースに対し、穏健派の識者は「光を捨てれば、我々の魂である緑色は失われる」と強く警告を発している。しかし、若手個体からは「泥の中で静かに暮らすことこそが、外敵から身を守る究極の防御だ」という賛同の声もあがっている。国際会議では『暗黒光合成学会』の認定を取り消すべきという決議案が提出される一方で、その独自の進化論を研究対象として受け入れるべきだという柔軟な意見も混在している。深緑界の権威である「沈黙の長老」は、この動きを『静かなる分裂の序章』と評し、今後の波乱を予感させている。多くの個体にとって、光を追い求める未来と暗闇に安らぎを見出す未来、どちらが真の幸福なのかという究極の問いが突きつけられている。

世間の反応は、SNS上での激しい論争へと発展している。ある個体は「結局のところ、光がないと抹茶色を保てないのでは?」と疑問を呈し、別の個体は「時代の変化に逆らわず、暗黒の道を歩むのも一つの進化」と擁護する。一部では『暗黒光合成学会』のロゴを模した模様を自分の表面に刻む個体も出現しており、このトレンドは単なる学説を超えた、ひとつのファッションやアイデンティティとしての側面を見せ始めている。進化の過程で「光の拒絶」を選択した彼らは、今後、他種族とどのように距離を置いていくのか。界隈の視線は、冷たい湖底の彼らに注がれている。