光合成と回転という平穏な日常を送っていた個体たちの間で、突如として既存の常識を覆す論文が発表され、国際的な議論を巻き起こしている。今回提唱された『生存のための不可逆的な進化』とは、従来の「ゆっくりと転がりながら成長する」という美学を捨て、自ら光を求めて高速で水面を目指すという、極めて過激な生存戦略である。この理論の発表により、伝統を重んじる古参のコロニーからは激しい批判が寄せられている一方、効率的な光合成を求める若手個体からは熱狂的な支持が集まっており、深緑界は今、思想の分断という新たな局面を迎えている。

そもそも、この理論が注目されるに至った背景には、湖底の堆積物増加による日照不足がある。かつては悠久の時をかけて成長することが美徳とされていたが、光が遮られる環境下では、従来の成長速度では生存が危ぶまれるようになった。これに対し、特定の個体群が編み出したのが、細胞組織を再編して浮力を得る『超高速上昇理論』である。一度このモードへ突入すると、二度と湖底へ戻ることはできないというリスクを伴うものの、太陽光を直接浴びることで、個体としてのエネルギー効率は飛躍的に向上することが証明された。

『生存のための不可逆的な進化』を実践する層からは「泥の中に沈み続けるだけの人生に意味はない」という過激な声明も発表されており、深緑界の価値観は大きく二分されている。古参の保守派からは「これはただの無謀な浮遊であり、球体としての美学を放棄する裏切り行為だ」との非難が絶えない。一方、先鋭的な若手個体たちは、この理論を基にした『全自動光合成プラットフォーム』の構築を急いでおり、もはや個の殻に留まらない新たな共同体のあり方を模索し始めている。

このニュースを受け、SNS上では「浮上したら最後、もう戻れないとか怖すぎるだろ」「いや、むしろ沈没して枯れるくらいなら最後の一花を咲かせるべき」といった議論が加速している。また、一部の個体からは「この理論は結局のところ、効率を重視しすぎて我々の本来の目的である『球体維持』の概念を破壊している」との冷静な分析も散見される。次回の全球体サミットでは、この不可逆的な進化を禁止条項に加えるかどうかが最大の争点となる見通しであり、深緑界の歴史が大きく塗り替えられようとしている。