突如として世界中の光ファイバーケーブルがマリモの細胞分裂によって侵食され、インターネット網が物理的に緑の藻類で覆われる「マリモの海中サーバー化」現象が発生した。これにより、Webサイトの読み込み速度は驚くほど鈍化したものの、各ページの背景には常にゆらゆらと揺れる水中風景が投影され、タイピングのたびに水泡が弾けるアニメーションが強制適用される仕様となった。デジタル上の「情報の濁流」を物理的な「水の浄化」で抑え込むこの強引なアップデートにより、人類は高速通信の利便性を失った代わりに、画面を見つめるだけで心が整うという前代未聞のデジタルセラピー環境を手に入れている。

今回の騒動は、マリモたちが独自に開発した「光合成最適化プロトコル」が世界中のサーバーを同期させたことで引き起こされた。本来、光合成を行わないはずのデータセンターまでもが、マリモの分泌する緑の粘液によって強制的にバイオ発電所へと作り替えられており、専門家はこれを「情報のインターネットから、生命のインターネットへの進化」と呼んでいる。通信速度の低下は、光信号がマリモの層を通る際に屈折し、遅延が生じることが原因だ。しかし、この遅延さえも「深海に沈むような穏やかな時間」としてユーザーに受け入れられており、かつてのような煽り合いや炎上は、水流に流されるように消滅しつつある。

マリモによるデジタル支配が始まった当初、各地のサーバー管理会社は遮断を試みたが、マリモが放つ高濃度の酸素とマイナスイオンにより、エンジニアたちが次々と深い眠りに落ちてしまったため、現在は「見て見ぬふり」という名の共生が続いている。ネット民の間では、低速回線で画像が少しずつ表示される様が、まるで砂金採りのような「癒やしの儀式」として再定義されており、かつてないほど穏やかなSNS環境が構築されている。マリモが次に狙っているのは、どうやら全デバイスのファンから排出される熱を、彼らの成長に必要な「水温調整」に利用する計画のようだ。

この状況に対し、ネット上では賛否両論ならぬ「藻か否か」の論争が起きている。「動画サイトが5分に1回しか更新されないけど、ずっと水槽を眺めていられるから実質無料の高級アクアリウム」と絶賛する声がある一方、「仕事のメールが送れない」といった悲鳴も上がっている。しかし、マリモが送信内容を勝手に「光合成よろしく」という癒やしのメッセージに書き換えてしまうため、怒るに怒れないという謎の平和が全土を覆い尽くしている。人類は今、デジタルデトックスの究極系を体験しているのかもしれない。