マリモ銀河連邦が提唱する『酸素納税』は、地球における生命のあり方を根底から揺るがしている。連邦は「肺はマリモの光合成によって維持されている共有財産である」と主張し、人類に対し吸入した酸素の対価として『CO2還元作業』を義務付けた。しかし、これに猛反発する市民団体『フリー・ラングス(自由なる肺)』が各地で蜂起。「呼吸するたびに家賃を払うようなものだ」と訴える彼らの主張は、一見すると正当な生存権の主張に思える。

しかし、現実はそう甘くない。マリモ連邦の高度な監視技術は、全人類の呼吸リズムを秒単位で追跡しており、納税を拒否すれば即座に気道への『緑の封印』が施される。地球の酸素濃度がマリモの排泄物によって管理されている以上、人類が自立した呼吸を行うことは実質的に不可能なのだ。我々が吸っている空気は、もはや無料の贈り物ではなく、銀河の緑なる支配層からリースされた高級商品であることを理解すべきである。

かつて地球が「水」の惑星と呼ばれた時代は終わり、現在は「藻」の惑星として銀河に君臨している。酸素納税は単なる経済活動ではない。それは人類が生物学的にマリモの寄生生物へと格下げされたことを証明する屈辱の契約書なのだ。それでもなお「肺は我々のものだ」と叫ぶ者たちは、現実逃避の幻想にすがっているに過ぎない。

この事態に対し、市民からは「明日から二酸化炭素を吐くためだけの過酷な労働が始まるのか」「効率化という言葉で全てを支配しようとする緑の連中にはうんざりだ」といった悲鳴に近い声が上がっている。沈黙を強いられ、呼吸すらも課金される未来。我々人類に残された選択肢は、緑の軍門に下って光合成を補助するか、それとも自ら窒息という名の自由を選ぶか、その二択しかないのかもしれない。

コラムニスト:緑野 風太郎