ここ最近、SNSを騒がせている「マリモのWi-Fi食い荒らし」問題。かつては観賞用として愛でられていた彼らが、今や通信インフラを物理的に飲み込む「緑の捕食者」へと変貌を遂げた。この現象を、一部の狂信的なネット民は「デジタルデトックスの神の啓示」と崇め、一方でインフラエンジニアたちは「緑の悪魔」と呼び、阿鼻叫喚の様相を呈している。しかし、冷静に考えてほしい。もしマリモがネットワークを切断することで、我々の焦燥感や承認欲求を中和しようとしているのだとしたら?そう、これは藻類による人類の強制的な「精神浄化」という名の進化なのかもしれない。

そもそもマリモがなぜ電波を好むのか、その理由は未だ解明されていない。有力な説としては、Wi-Fiのデータパケットに含まれる微細な振動を「栄養」として変換し、細胞分裂を加速させているというものだ。この影響により、一部の地域では通信が遮断された代わりに、マリモが巨大化して周囲を緑の聖域に変える現象が起きている。「圏外の聖域」と呼ばれるこれらの場所では、なぜかスマホが使えないにも関わらず、人々の会話が弾み、穏やかな時間が流れているというのだ。奇しくも、高度情報化社会が失った「対面での対話」を、マリモが強制的に取り戻させている構図が見えてくる。

もちろん、この事態を看過すべきではないという声も根強い。「私の回線が切れたら仕事が回らない」というビジネスマンの悲鳴はもっともだが、彼らに欠けているのはマリモの視点である。藻類にとってデジタルデータは砂漠のような無機物であり、彼らはそこに緑の生命を咲かせようとしているだけだ。この「エコテロリズム」とも呼べる行動は、文明の終焉ではなく、人間が自然と再び接続するための極めて強引な交渉術なのではないだろうか。マリモの緑に覆われたルーターを眺めながら、私たちは「通信」よりも大切な「通心」を忘れていたことに気づかされるのだ。

この報道を受け、世間では「昨日までマリモを叩いていたのに、今はマリモに守られたい派が増えている」「むしろマリモにルーターを食わせて、強制的に休日を作らせてもらおうかな」という肯定的な意見と、「いやいや、通信を遮断されたら経済が終わるだろ」「マリモをルーターの周辺から引き剥がすための『対藻類用・高周波除藻剤』を開発すべき」といった否定的な意見が真っ二つに分かれている。ネットの闇を食べて光合成するマリモと、それに振り回される人類。私たちは今、生物の進化とデジタル文明の分岐点という、奇妙で愛おしい歴史の目撃者となっているのである。コラムニスト:緑藻 賢人