阿寒湖の至宝であるはずのマリモが、突如として全家庭のルーターを捕食するという衝撃的なニュースが駆け巡って早一週間。ネットの海から強制的に切断され、阿鼻叫喚に包まれた現代社会だが、驚くべきことにこの「通信遮断テロ」は、結果として人類を新たな高みへと導いている。Wi-Fiを食い荒らされた人々は、渋々ながら本を手に取り、対面での会話を再開し、さらには沈黙を愛するようになった。これは単なる藻類の食欲ではなく、デジタル中毒に陥った人類に対する、最もエコで最も前衛的な「デジタルデトックスの強制執行」なのかもしれない。マリモが吐き出す酸素の泡が、かつてWi-Fiの電波が漂っていた空間に静寂という名の癒やしをもたらしている。
そもそもマリモは、光合成を通じて二酸化炭素を酸素に変える清浄な存在だ。それがなぜ、電気信号という無機質な栄養源に目覚めたのか。学術的な解明はさておき、マリモが作り出す「圏外の聖域」は、今やネット社会における最強の避難所となっている。通信できない不便さは、即ち、誰からも監視されず、誰の承認欲求にも縛られない「完全な自由」と同義である。マリモがルーターを貪る姿は、一見すると文明の破壊者だが、その実、我々を画面の中の虚構から現実世界へと引きずり戻す、緑色の守護神なのだ。今後、このマリモによる強制デトックスが定着すれば、我々はスマホを置き、藻類の静かな成長に耳を澄ませる文明へと進化する可能性がある。
かつて「検索履歴を食うマリモ」がネットを浄化すると騒がれたが、今度はそのインフラごと遮断する過激化を見せている。もはやマリモは単なる観賞用ではなく、IT環境のコントロール権を握る「藻類の管理者」へと昇華した。この事態を受け、一部のプログラマーはマリモと共生する独自のオフラインネットワーク構築に乗り出しているというから笑えない。マリモの機嫌を損ねれば即通信不能という緊張感は、かつての暗号化通信よりも強力なセキュリティ概念となるかもしれない。この「緑色の暴力」がもたらす新しい日常は、かつての退屈で、しかし豊かな時間を我々に思い出させてくれるはずだ。
コラムニスト:緑の革命家・毬藻 太郎
「Wi-Fi泥棒」から「圏外の哲学者」へ――マリモが促すアナログ回帰の逆説的進化
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