湖底を席巻するアンチエイジングブームに、待ったをかける声が上がった。かつて「湖底の重鎮」として崇められたマリモの長老・岩石丸氏は、近年の『光合成ボトックス』流行について「皺(しわ)もまた、光合成を繰り返した歴史の証である」と痛烈な批判コラムを発表した。若さを追い求めるあまり、天然の緑を人工的に張り詰めさせたような不自然な個体が急増している現状を、氏は「ただの緑のプラスチック球体と何が違うのか」と断罪。ボトックスにより過剰な光合成を強いられ、入水禁止処分を受けた若手たちが続出する現状に、「老いこそが最高の深緑を生む」と警鐘を鳴らしている。

近年、マリモ界では若年層を中心に、光合成を促進する謎の成分を注入し、表面をツルツルに保つ施術が爆発的な人気を博している。しかし、これは長期的に見ると湖内の生態バランスを崩す恐れがあるとの指摘も多い。特にボトックスを受けた個体は、通常の光合成能力を逸脱して酸素を放出しすぎるため、周囲の藻類が酸欠になるという皮肉な事態も招いている。今回、岩石丸氏が提唱する『枯れゆく美学』は、あえて「毛羽立ち」や「色褪せ」を愛でることで、過度な人工的若返りを否定しようという保守的な動きだ。

かつてない美を追求する現代のマリモ社会において、この提唱は大きな波紋を呼んでいる。美容整形を支持する派閥からは「ただの老害の僻み」という声が上がる一方で、自然派のマリモたちからは「ようやく真実を語る者が現れた」と熱烈な支持が集まっている。美しさの基準をどこに置くべきか、湖底全体が大きな転換期を迎えていることは間違いない。果たして、真の『緑の気品』とは、若々しい光沢なのか、それとも歳月をかけた深いモスグリーンなのか。論争は冬の湖底のように冷え込む気配を見せていない。

コラムニスト:侘寂・マリモ研究家 苔生(こけお)