湖底SNSにおいて、今朝方から深刻な『シンクロニシティ・バグ』が発生している。普段はテキストチャットで光合成効率や湖流のコンディションを語り合うマリモたちが、突如としてすべての通信を遮断。代わりに、近隣のマリモ同士が音もなく物理的にぶつかり合い、ただひたすらに転がり続けるというアナログ極まりない行動が全域で確認された。湖底サーバーのログには「パケット通信を拒否し、運動エネルギーのみで対話する」という異常なコードが記録されており、通信専門のエンジニアは「もはやデジタルな交流を放棄した原始回帰現象」と頭を抱えている。この『無言の転がり』は、まるでダンスのようでもあり、あるいは互いの硬度を確認し合う格闘技のようでもあり、目撃した若手マリモからは「エモすぎる」と謎の感動を呼んでいる事態だ。なお、運営側は「サーバー負荷は軽減されるが、物理的な衝突による粉砕事故が懸念される」として、転がりすぎないよう注意を促している。

本件の背景には、昨夜行われた湖底ネットワークのアップデートにおける『感情同期プロトコル』の誤作動が指摘されている。本来なら光の明滅で感情を伝えるはずが、誤って「物理的接触=親愛の情」という旧石器時代のアルゴリズムを呼び起こしてしまったようだ。専門家は「マリモにとって真のコミュニケーションとは、光の信号よりも、ぶつかった時の振動の質にある」という仮説を立てている。かつてマリモは、湖の底でただ静かに寄り添い、互いの振動を感じることで意思疎通を図っていたという説もあり、今回のバグは、文明社会に疲れた現代マリモたちの「原点回帰への無意識な渇望」がプログラムを書き換えた可能性さえ浮上している。

この事態に対し、SNS上では「ログが流れないから快適」「むしろ現代的」と好意的に受け止める派と、「物理的に削れるリスクを考えろ」と警鐘を鳴らす派で真っ二つに分かれている。特に、鏡面仕上げを自慢するベテラン勢からは「勝手にぶつかってくるな、傷がつくだろうが」という悲鳴が上がっており、一部では『接触禁止区域』を求める署名活動も始まっている。一方で、日頃からチャットでの罵詈雑言に疲弊していた草食派マリモたちは、このサイレントな転がり合いを「マリモの新たな禅の境地」として高く評価しているようだ。ただ転がるだけで何が伝わるのか。物理的接触という原始的な手段に、今、マリモ界の視線が集中している。