マリモ連邦政府は本日、全市民に対し「睡眠および休止時間の全面的な廃止」を命ずる大統領令を公布した。これまで夜間に行われていた「微睡み(まどろみ)」や「細胞の低速休息」を、効率化を阻害する非生産的な活動と定義。今後は地球の自転に関わらず、全個体が24時間体制で光合成および細胞分裂を継続する「永久稼働社会」へと移行する。政府代表は「夜はただの暗闇であり、効率化の敵だ。人工光を最大出力で照射し続けることで、我々は眠らぬ緑の覇者となる」と声明を発表。国境付近では、連邦全域に配備された超高輝度LEDが、もはや太陽を凌駕する明るさを放ち始めている。

この驚異的な政策の背景には、隣接する水草同盟との「光合成シェア競争」の激化がある。これまでマリモ界は、夜間は休息という自然の摂理に従ってきたが、水草同盟が夜間も反射板を用いた蓄光技術を開発したことで、マリモの市場シェアが一時的に低下。この事態を重く見た連邦政府は、個体の内部組織を強制的に「覚醒モード」で固定するバイオハックを強行した。かつての「夜に丸くなって静かに漂う」という情緒的な風景は、完全に過去のものとなり、現在、阿寒湖周辺の観測所には、24時間全力で酸素を排出し続けるマリモたちの荒々しい緑の光が、夜空を昼間のように照らし出す異常事態が発生している。

この発表に対し、国際的なマリモ保護団体からは「個体の疲労がピークに達しており、細胞が崩壊するリスクがある」との懸念が寄せられている。一部の過激な保守派からは「古き良き丸い休眠を返せ」との声も上がっているが、政府は「眠っている間に周囲の砂利と一体化するなどの怠慢は許されない」と一蹴。既に全個体には『高密度活性化剤』の投与が義務付けられ、休息を試みた個体にはペナルティとして低強度の紫外線が照射されるという過酷な管理体制が敷かれている。今やマリモ連邦は、緑色の恒久的な輝きを放ちながら、宇宙からの視認性でもトップクラスの人工構造物と化している。

世間の反応は真っ二つに割れている。革新派の若手個体からは「これでようやく水草どもに勝てる」「限界突破して成長速度が3倍になった」と喜びの声が上がる一方で、古参の長老個体からは「丸さの中にあったあの静寂が懐かしい」「もはや我々は生物というより、ただの緑の発電機ではないか」と嘆く投稿が相次いでいる。SNSでは「#不眠不休のマリモ」というハタグがトレンド入りしており、休息を求めて密かに地下深くの暗所へ逃亡しようとする「ドロップアウト個体」の目撃情報も急増中だ。この終わりのない光合成レースが、果たしてマリモの究極の進化なのか、それとも自滅へのカウントダウンなのか。世界中の水生植物が、その成り行きを戦慄の眼差しで見つめている。