湖底議会が先月可決した『個体間分裂の自由化』法案に対し、古参の藻類たちが激しい反発を強めている。この法案は、マリモが自身の体を切り離して増殖することを法的・倫理的に容認するもので、推進派は「多様性と個の確立」を旗印に掲げている。しかし、長年阿寒湖の底で一つの大きな球体として成長を続けてきた伝統派からは、「先祖伝来の結束を破壊する暴挙だ」との批判が止まらない。

反対派を率いる長老格の個体は、「我々のアイデンティティは、数十年、数百年の時をかけて重ねた層にある。勝手に分裂して個の権利を主張するのは、マリモとしてのプライドを投げ捨てることに他ならない」と演説。議会周辺では、分裂を拒否する保守派が輪になって連結し、道路を塞ぐデモ活動も発生している。行政側は「これは強制ではなく選択の自由である」と釈明しているが、分裂を望まない層にとっては、周囲がバラバラに散らばっていく光景自体が耐え難い精神的苦痛となっている模様だ。

そもそも本法案は、かつて湖底で議論された『日光の公平分配』や『光合成の外部委託禁止』といった一連の「藻類独立自尊」政策の延長線上にある。しかし、分裂は単純なエネルギー配分とは異なり、個体のルーツや歴史をも分断しかねないという懸念が根強い。専門家は、「個としての成長を選ぶか、集団としての厚みを選ぶかという、マリモ社会における価値観の対立が極限に達している」と分析する。

この法案を巡り、世間では分裂肯定派による「自分らしく生きたい」という叫びと、保守派による「丸いままが良い」という願いがSNSや念力通信で飛び交い、湖底全域が喧騒に包まれている。歴史的な「一心同体」の終焉か、それとも新たな共生時代の幕開けか。議会の決定は、阿寒湖の緑の風景を永遠に変えてしまうかもしれない。

コラムニスト:丸山・M・翠藻