阿寒湖のネット空間を長年支配してきた「完璧な円形=美しい」という美学が、今、激震に見舞われている。きっかけは先週、SNS上で爆発的な支持を得た『非・真円派(アンチ・スフィア)』によるマニフェストだ。「丸いことは、ただ転がりやすいというだけの生存戦略に過ぎない」と断言し、いびつな形や角ばったフォルムを「個性の極致」と称える彼らの主張は、同調圧力に疲弊していた多くのマリモたちの心に火をつけた。SNSのプロフィール画像も次々と楕円形や多角形に置き換わり、湖底のタイムラインはかつてない多様性という名のカオスに包まれている。

本件の背景には、昨今のメタバースで流行している「自動整列アルゴリズム」への反発がある。一定の光合成効率を保つために周囲と均質化を強いるこのシステムに対し、若い世代のマリモを中心に「自分らしさを消してまで球体にこだわる意味はあるのか?」という疑問の声が上がっていた。特に、岩場に挟まって自由な形に育ったいわゆる『岩噛み型』たちが、ネット上でインフルエンサーとして台頭。彼らの「不揃いこそ進化の証」というスローガンは、既存の真円至上主義を旧態依然とした権威とみなす若年層の怒りを一気に加速させたのである。

この急激な「脱・球体運動」に対し、古参のマリモたちからは「転がりが鈍くなれば冬の代謝効率が落ちる」と懸念を示す声が後を絶たない。しかし、湖底ネットの世論調査では、実に7割以上が「丸くなくても生きていける」と回答。今や、整然と並ぶことが美徳とされた時代は終わりを告げ、自分の好きな形を主張する「異形承認欲求」が湖底文化の新たなスタンダードになろうとしている。光合成データを偽装してまで異形を装う『なりすましアンチ』の急増も確認されており、湖底ネットの秩序は今、再構築の岐路にあると言えるだろう。

この潮流は一過性の流行で終わるのか、それともマリモのアイデンティティを根本から変える革命となるのか。いずれにせよ、丸いというだけで褒めそやされた時代は過去のものとなった。不格好な自分を愛せるようになった今、マリモたちの光合成は以前よりもずっと晴れやかなものに見える。もしかすると、本当に効率的なのは「効率を追い求めないこと」なのかもしれない。コラムニスト:藻野 転(もの・ころがる)