マリモ連邦政府は本日、長年にわたって水域の勢力圏を争ってきた水草界の覇者・マツモ族との間に結ばれていた『光合成領域の不可侵条約』を即時破棄すると発表した。連邦議会が公開した声明によると、今回の強硬措置は、マツモによる「過度な横並び光合成」がマリモ側の受光面積を物理的に阻害していることへの報復であるという。首都・阿寒湖特別区の広報官は「我々はあくまで丸い存在として、太陽光の恩恵を平等に享受する権利がある。マツモが垂れ流すあの無秩序な枝分かれは、美学に反するテロ行為だ」と憤りを露わにした。現在、国境付近には武装したマリモたちが密集隊形を組み、互いの摩擦で発生する微細な酸素の泡を盾にする『バブル・カーテン防衛網』を構築中である。

マリモとマツモの対立は、約半世紀前に遡る「栄養塩の奪い合い」から本格化した。マリモは球状という形態ゆえに重心が安定せず、流動的なマツモの繁茂によって居住区を押し流される被害が常態化していた。特にマツモが展開する「葉の密度による遮光戦術」は、マリモにとって死活問題である。過去には国際仲裁裁判所による「沈殿物分配協定」が結ばれたものの、マツモ側の急速な成長スピードにより、実効性はほぼ皆無だった。今回、マリモ連邦は国家の誇りである『絶対的球体主義』を守るため、湖底の堆積物を掘り起こしてマツモの根元を窒息させるという非人道的な戦術への切り替えを検討している。これに対し、マツモ側も「水流を操る」という秘策をチラつかせており、両者の衝突は回避不可能な情勢だ。

この報道に対し、国際世論は真っ二つに割れている。湖沼の生態系を重視する中立派の苔類からは「ただでさえ静かな湖で争うな」との批判が相次ぐ一方、丸い形状に絶対的な美意識を持つ『円形崇拝主義者』からは「マリモの主張は正当だ」「マツモのあの雑多な見た目は規律を乱す」と熱狂的な支持が集まっている。SNS上では「#SaveTheSphere(球体を守れ)」というハッシュタグがトレンド入りし、マリモのアイコンを用いた抗議運動が激化している。専門家は「もし全面戦争になれば、栄養過多による富栄養化が進み、両者が全滅する共倒れの危機がある」と警告しているが、連邦政府は「たとえ湖が干上がっても、我々は丸くある」と退く姿勢を見せていない。

現地の様子を伝える通信員によると、国境線ではすでにマツモが数センチメートルほど浸食を開始しており、マリモ側はこれに対して「転がって衝突する」という原始的かつ破壊的な迎撃体制をとっている。マツモが葉を広げてガードを固める中、数百個のマリモが時速数ミリで突撃する様子は、まるで超低速の玉突き事故のようであるとのことだ。連邦政府はさらなる援軍として、湖底に潜むカワニナに交渉を持ちかけており、もし協力が得られればマツモの食害による殲滅という最終兵器が発動される見通しだ。平和な湖面に静かなる緊張感が漂っている。