阿寒湖底政府は本日、長年の天敵であるウチダザリガニとの間で、不可侵および捕食禁止を定めた「湖底平和維持協定」を締結したと発表した。政府側は「これで我々の繊維が断たれる心配はなくなる」と説明するが、条約の付帯決議として『毎月第3木曜日は自主的に湖底の窪みへ身を寄せること』という過酷な譲歩案が含まれていたことが判明。これに対し、野党・硬質派マリモ党からは「これは協定ではない、ただの餌場提供だ!」との怒号が上がり、湖底議会は一時騒然とした空気に包まれた。

背景には、ここ数年で急増したウチダザリガニによる「集団ハサミ研ぎ」という威嚇行為がある。政府は物理的な防衛予算の限界を悟り、今回のような外交的妥協へと舵を切った形だ。しかし、この譲歩によって守られるのは一部の特権層マリモだけであり、外縁部に位置する若手マリモたちは「身を寄せる窪みさえ確保できない」と反発。真球度を維持するための公的補助が削られる可能性もあり、平和の代償が大きすぎるとの批判が噴出している。

今回の締結を主導した緑藻首相は、記者会見で「転がり続けなければ我々は生存できない。そのための停戦だ」と弁明したが、会見中に首相の左端がわずかに欠けていることが発見され、会場は騒然。暗殺未遂か、あるいは自ら差し出した献上品か、憶測が飛び交っている。湖底には、この協定が明日以降の光合成効率にどう影響するか、不安と不満が澱のように溜まり始めている。

世間の反応は冷ややかだ。SNS上では「平和のために自分の身を削る必要がどこにあるのか」「ザリガニと握手して何になる、ハサミに挟まれるだけだ」といった悲観的な投稿が溢れ、ハッシュタグ『#マリモの尊厳を守れ』がトレンド入りを果たした。一部の過激なマリモからは「湖底全土でのストライキ決行」や「いっそ岩に擬態して数十年やり過ごす」といった極端な意見も散見され、政府の指導力は今、かつてない危機に瀕している。