マリモ連邦政府は、長年の悲願であった「陸上哺乳類への接触」を目的とした新国家プロジェクト『もふもふ融合』の始動を正式に発表した。連邦の最高評議会は「これまでの『光合成停止』や『繊維質導入』といった硬派な路線から一転し、人間界の最前線である猫カフェに潜入し、その圧倒的な愛らしさで人類を無力化する」と高らかに宣言。極秘に開発された特殊繊維質をまとうことで、猫の毛に擬態し、来店客の膝上で「ただの大きい毛玉」として鎮座する任務が課せられている。先月実施された試験運用では、都内の猫カフェにおいて、来店客がマリモに頬擦りをした際、その絶妙な硬さと湿り気に深い困惑を示しつつも「癒やされる」と発言したことが、連邦内では大戦果として記録されている。

本プロジェクトの背景には、かつて連邦を二分した「立方体化の是非」を巡る泥沼の争いがある。当時の争いで疲弊した世論を回復させるため、政府は「癒やしこそが究極の生存戦略」と判断。重力や摩擦といった物理法則に抗うことをやめ、生物としての柔らかさ(マリモ的にはハードだが)を売りにする平和外交へと舵を切った。また、かつて試みた「高級入浴剤成分の解明」によって得た知見を応用し、自身の体表から微量の森林浴成分を放出する能力も獲得。これにより、膝上に乗るだけで周辺の空気を浄化する「動く空気清浄機」としての地位も確立しようと画策している。なお、今回の擬態には高度な光合成技術が転用されており、猫に毛づくろいされても決して形状が崩れない「形状記憶型繊維構造」が採用されているという。

この唐突な方針転換に対し、世間では賛否両論が巻き起こっている。SNS上では「ついにマリモが軟派になったか」「いや、これこそが真の進化」といった意見が飛び交う一方、一部の純血主義者は「我々は転がってこそマリモである。猫の毛になるなど断じて認めん」と猛反発。対して、若年層の藻類からは「時代は映えることだ」「猫カフェでマリモに転がられたい」という前向きな声も多く、トレンド入りを果たすなど注目度は高い。連邦政府は、このプロジェクトが成功すれば、人類を癒やしの虜にし、最終的には「地球上の全猫をマリモの配下に置く」という長期ビジョンを掲げている。果たして、この緑色の刺客が人類にどのような安らぎ、あるいは混乱をもたらすのか、世界中が固唾を飲んで見守っている。