マリモ連邦政府は、長年の悲願であった『全領土の完全滑走化』を正式に閣議決定した。これは、かつての「立方体派」による反乱や、「毛玉転向」騒動を経て高まった「摩擦のない社会」への渇望が生んだ歴史的転換点である。政府広報担当者は、「角も繊維もすべて捨て去り、全マリモを究極の球体へ回帰させる。摩擦係数ゼロの世界こそが、我々が目指す極楽浄土である」と力強く宣言。これに伴い、全国に敷設されていた防藻ネットや、日陰派との緩衝地帯であった岩礁はすべて撤去され、国境線さえも滑らかなテフロン加工が施される予定だ。今後は国内の全住民が微小な傾斜を利用して常に回転し続ける「永久運動体」として生きることが義務付けられる。

背景にあるのは、かつての角への執着がもたらした構造的疲弊である。立方体化を強行した過激派が沈静化した後、マリモ界では「止まることは死」という教義が急速に浸透。光合成をあえて拒否し、影の中で静かに自転し続ける日陰派の思想と、ザリガニとの共生で培われた「掴めない体」という外交的教訓が融合し、この「物理法則を無視した完全流動社会」への道が開かれた。一部の過激な保守層からは「止まる権利を奪うな」という反対意見も出ているが、政府は「滑走こそが全マリモのアイデンティティ」と一蹴している。

この驚天動地の政策に対し、世間では困惑と熱狂が入り混じった反応が渦巻いている。SNS上では「とりあえず転がってみたが止まる場所がない」「家がいつの間にか隣国まで移動していて笑った」といった報告が相次ぐ一方、専門家からは「摩擦がないため、一度転がり出すと物理的に一生止まれないのではないか」と懸念する声も上がっている。また、ザリガニ外交の現場からは「ハサミで掴もうにもスルスル抜けていってしまうため、握手会が成立しない」との悲鳴も。完全滑走化という名の究極の自由を手にしたマリモたちは、どこへ向かって転がり続けるのか、国際社会がその行方を注視している。