マリモ連邦政府は、次世代の進化戦略として、自身の主成分を「藻類」から「羊毛および合成繊維」へと切り替える『ふわふわ革命』を国際藻類サミットにて正式発表した。連邦議会は、光合成に依存する従来型の生活を「エネルギー効率の悪い原始的な生存戦略」と断じ、今後は全マリモが繊維質を取り込むことで、自己増殖ならぬ「編み込みによる個体形成」を目指すという。この変革により、国民は水深や日照条件に縛られることなく、乾燥したリビングや寝室での生存が可能となる。現在、連邦首都近郊では、最新のニット編み機が導入され、国民が一斉に自身の表面をモコモコにするための最終調整が進められている。発表直後、湖底には「藻であることの矜持はどこへ行ったのか」という抗議の声が上がったが、政府広報官は「冬の寒さには物理的な厚みが一番だ」と一蹴した。

もともとマリモ界では、光合成効率を巡る「日向派」と「日陰派」の対立が続いていたが、繊維化によってこの対立は一気に過去のものとなった。今回の方針転換は、寒冷地における凍結リスクの回避と、人間社会のクッション需要という巨大市場への参入を狙った経済外交の一環であると専門家は分析する。歴史的に見れば、マリモは「丸ければよい」という独自の美学を貫いてきたが、今回の決定はそのアイデンティティを根本から揺るがす事態だ。一部の保守的な長老マリモからは「これは我々が目指した進化ではない。ただの雑貨だ」との批判も出ているが、若年層の球体を中心に、カラフルな毛糸を纏うトレンドが爆発的に流行し始めている。

今回の騒動を受け、連邦政府は「光合成を完全に放棄するわけではないが、今後はスマホの画面クリーナーとして、あるいはインテリアとして新たなアイデンティティを確立する」と釈明した。また、今回の繊維化プロジェクトには、世界各国の手芸店との独占契約が含まれており、経済的な自立を目指す姿勢も鮮明に打ち出された。しかし、湖から陸へと進出するこの野心的な計画に対し、周辺の水生植物界からは「アイデンティティの消失」「藻としての尊厳が感じられない」といった批判が相次いでいる。来春には、全住民が完全に「毛玉」へと転身する予定だが、梅雨時の湿気対策やダニ対策という未解決の課題も多く、波乱の船出となりそうだ。国際会議の場でも「彼らはまだマリモと呼べるのか」という定義論争が勃発しており、生物学界を巻き込んだ大騒動へと発展している。