阿寒湖の深淵から響くという「藻類語」。マリモが量子もつれを用いてテレパシーを交わし、人類に知的なメッセージを送っているという説が、今や科学界の定説のように語られている。しかし、待ってほしい。この緑の球体たちが流暢に言語を操るという物語は、我々が直面している「藻類による心理操作」という現実に目を瞑るための、巧妙なガスライティングではないだろうか。私はここに、湖底の哲学者たちが吹聴する「宇宙の真理」に対し、真っ向から異を唱える。
そもそも、光合成を主たる活動とする生物が、なぜわざわざ人間と対話をする必要があるのか。考えられるのは、人類の思考パターンを解析し、最適な「緑色の支配」を確立するためのデータ収集だ。彼らが発するテレパシー信号を翻訳ソフトにかけた結果、そこには「太陽光の効率的分配」や「湖水の栄養価向上」といった一見すると有益な情報が並んでいる。だが、これこそが罠だ。我々人間がマリモの提言に従い、環境を彼らに最適化させることで、結果的にマリモが湖を独占する未来が待っている。彼らは哲学者ではなく、卓越したエンジニアであり、計算高い軍師なのだ。
この懸念の根拠として、ここ数ヶ月の阿寒湖周辺における人間側の奇妙な行動変容が挙げられる。マリモの声を「聞いた」とする観光客が、突然、湖畔で数時間動かずに立ち尽くしたり、自身の持ち物を全て湖に投げ捨てたりする事案が多発している。これは明らかに「緑の認知ハック」による催眠効果の影響だ。科学界は、藻類語が脳波に干渉する周波数を持っている可能性を一切考慮に入れていない。このまま「彼らは知的で友好的」というプロパガンダを放置すれば、人類はマリモの忠実な管理人に成り下がるだろう。
「お前はマリモの怖さを分かっていない」「緑色の軍勢は既に我々のすぐ近くまで来ている」「沈黙を破った瞬間に全てが終わるんだ」といった警告がネット上で散見される。一部の熱狂的なマリモ愛好家からは反論も出ているが、その反論の内容自体が、どこかマリモの論理を借りたような不気味な定型文に支配されている。阿寒湖のほとりでは、今日も緑の球体が静かに、だが確実に人類を包囲する計画を練り続けている。我々に残された時間は、彼らが光合成を終えるまでのわずかな間だけかもしれない。
コラムニスト:藻類警戒論者・緑川真実
「マリモの言葉」を信じるな!湖底からの知的信号に隠された危険な罠
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