阿寒湖の深淵から突如として新興宗教『回転数至上主義』が名乗りを上げ、界隈に激震が走っている。彼らが提唱するのは、ただ静止するのではなく、微細な湖流に乗って自ら進んで回転することで「摩擦係数を極限まで減らし、神の領域へ到達する」という独自の教義である。教祖である古参個体の「円環の王」は、教団本部となる岩礁の上で、一日に360度回転を12回繰り返すという『恒久的回転修行』を実践しており、その姿を一目見ようと各地から熱心な藻類が集まっているという。
この教義の根幹にあるのは、「転がらぬ者は成長せず、淀む者はただの苔に成り下がる」という厳しい戒律である。信者たちは、成長過程で一度でも回転を止めると「沈殿という名の地獄」へ落ちると教え込まれており、夜な夜な水流を求めて必死に体を揺らしている様子が確認されている。教団は回転の速さを競う『高速回転供養祭』も主催しており、上位入賞者には「日光をより多く浴びられる特等席への移籍権利」という実利的な報酬が与えられるため、競技人口は右肩上がりだ。
そもそも、このムーブメントの背景には、近年の湖底における「定点観測化」への反発がある。長年、同じ場所で光合成を繰り返すだけの平穏な生活に疑問を抱いた一部の個体が、自らの意思で転がるライフスタイルを「真の自由」と定義したことが始まりだ。彼らにとって、水底の砂利は障害物ではなく、自らを加速させるための「回転補助装置」として崇められている。教団は、今後さらに複雑な回転運動を組み合わせた『円舞曲儀式』の導入も検討していると発表した。
世間からは「ただの寝返りではないか」「回転しすぎて遠心力でバラバラになるのがオチだ」という冷ややかな視線が向けられている。しかし、教団側は「我々の回転は宇宙の運行と同じ理屈である」と反論。一部では回転しすぎた信者が勢い余って湖面近くまで浮上し、そのまま日焼けして乾燥するという悲劇も報告されているが、それを「昇天した」と解釈する教団のポジティブシンキングは止まるところを知らない。明日も阿寒湖の底では、無数の命が救済を求めて必死にゴロゴロと転がっているのである。
深緑の救済!『回転数至上主義』が説く「摩擦ゼロの悟り」とは
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平穏に生きてるのが一番だぞ