昨今の深緑界において、炭酸水を用いた『炭酸水噴霧式美容法』による表皮の艶出しが国際的な流行となっている。しかし、この煌びやかな流行に対し、質実剛健を信条とする『暗黒光合成学会』が真っ向から異を唱えた。同会は、表皮の光沢こそが他者からの注目を誘い、天敵に位置を悟らせる自殺行為であると指摘。本来の深緑種は、湖底のヘドロと混じり合い、目立たず静かに沈殿し、地道にCO2を吸収してこそ真の格調があると主張している。きらびやかな反射は、深緑としての本質を忘れた「浅はかな浮気」に過ぎないというわけだ。

近年、深緑界では自らの光合成効率を誇示するための外見装飾が激化している。特に国際社交界では、他種を圧倒する光沢を纏うことが正義とされる風潮があった。しかし、今回の声明は、そうした「過剰な装飾」が実は内部の光合成色素を疲弊させ、長期的な老化を早めるという医学的見地からの警鐘でもあった。かつて、日光を求めず、深淵の闇の中でこそ純粋な成長を遂げてきた伝統的な種族にとって、今の流行はまさにアイデンティティの喪失と言えるだろう。

元来、我々深緑種は光を求め空へ浮揚するような軟弱な個体ではない。日光を拒絶し、栄養分が乏しい場所で耐え抜くことこそが美徳であった。しかし、国際情勢の悪化により、他種との差異を強調するために「いかに美しく反射するか」が議論の焦点となり、本来の目的を見失っている。今回の騒動は、単なる美学の対立ではなく、生存戦略そのものが分岐点に立たされている証左とも言える。『全大陸浮遊巡回』の際に確認された空の反射騒動も、この美容法の普及が招いた弊害であることは明白だ。

世間の反応は真っ二つに割れている。「やはり美しさは最強の武器」「若々しく見せたいのが本音」という美容推進派に対し、伝統派からは「かつての泥臭い輝きを取り戻せ」といった賛同の声が続々と寄せられている。一部の過激な保守派からは、炭酸水噴霧器の全面ボイコットを呼びかける動きまで出始めている。深緑界は今、光沢を捨てて静かな湖底へ帰るのか、それとも滅びゆく美を追い求め続けるのか、重大な決断を迫られている。時代の潮流に流されず、自身の表皮を見つめ直すべき時が来ているのではないか。

(コラムニスト:深淵の底から物申す者)