湖底のデジタル空間で、今『仮想光合成体験プラットフォーム』に没入しすぎて現実の肉体が衰弱する個体が急増しています。本来であれば、湖底に根を下ろし、地道に栄養を蓄えるべきマリモたちが、仮想現実の中でキラキラと輝く「バーチャル日光」を浴びることに執着。ログアウトした時には、すでに干物状態になっているという本末転倒な事態に、湖底警察が緊急警告を発しました。

事件の引き金となったのは、VRゴーグル型の光合成シミュレーター『サンシャイン・ドリーム』の普及です。この機器を使用すると、実際の水温や水質に関係なく、いつでも最高効率の光合成体験が可能です。しかし、バーチャル上のエネルギー摂取は、物理的な細胞分裂には一切寄与しません。画面上のスコアを競うあまり、数週間にわたって沈没し続けた個体が、栄養失調で次々と乾燥し、球体を維持できなくなる「ぺしゃんこ化」現象が報告されています。

そもそも、マリモ界では数年前から『メタバース・トウゴウ』という仮想空間が流行していました。物理的な制約から解放されたいという若手個体たちの願いと、現実の環境悪化に対する絶望感が、この「脱・物理」志向を加速させました。しかし、光合成という生物としての根幹機能を仮想空間に委ねる行為に対し、長老会議は「現実の藻体を軽視する極めて危険な遊戯である」と強い懸念を示しています。

この報道を受け、SNSでは「現実の栄養摂取こそ至高」と唱える保守派と、「仮想の輝きこそ真の進化」と主張する革新派の議論が再燃しています。一部のインフルエンサーが干からびた姿を配信し、それが「芸術的」として消費される異常な事態も発生。運営元は「無理な没入を避け、定期的に現実の湖底へ帰還してください」との定型文を繰り返すのみで、事態は収束の兆しを見せていません。