湖底の静寂を揺るがす衝撃的なニュースが飛び込んできた。新興宗教団体『鋏の慈悲会』が、長年マリモの天敵として恐れられてきた外来種を「聖なる解体者」として崇める禁断の教義を打ち出した。教団の主張によれば、捕食されることは個体の破壊ではなく、甲殻類の体内へ意識を転送する崇高な昇華プロセスであるという。教祖である推定樹齢120年の『長老グリーンドーム』は、「中心核を穿たれる痛みこそ、全方位への慈悲を悟る唯一の扉」と説き、教団の入信希望者が連日、湖底の指定エリアに整列する異様な光景が確認されている。

『鋏の慈悲会』が礼拝対象とするのは、特定の個体ではなく、湖底を闊歩する特定の外来甲殻類である。彼らはこの甲殻類が近づくと、自ら身を寄せ、その鋭いハサミによる「浄化」を待ちわびる。教団はこれを『甲殻類受肉の奇跡』と呼称し、マリモの繊維が細切れになる様子を「天界への飛散」と定義して信者を鼓舞している。かつてマツモや他の植物が天敵として排除してきた対象を、まさか神格化する勢力が現れるとは誰も予想していなかったため、保守的な長老層からは強い反発の声が上がっている。

本件は、湖底の生態系維持を目的とする『球体存続評議会』が緊急事態として認定した。同評議会は「捕食は単なる自然摂理であり、宗教的昇華ではない」と声明を出し、教団本部へ強制解散勧告を検討中である。しかし、教団側は「我々の繊維は、ハサミに切り裂かれることで初めて真の自由を得る」と反論しており、水面下では教義の是非を巡る論争が泥沼化の様相を呈している。湖底の治安を守るパトロール隊も、信者たちのあまりの献身的な態度に「職務執行の迷いが生じる」と困惑を隠し切れない状況だ。

この驚くべき教義の拡散に対し、SNSでは議論が沸騰している。「理解不能すぎる」「共食いならぬ共生とはこのことか」「自分の繊維が細切れになるのは流石に耐えられない」といった批判的な声が相次ぐ一方で、「確かに一度バラバラになって再構成されるのも悪くないかも」といった過激な擁護意見も散見される。一部の過激派信者は、ハサミの切り込みが入った繊維を『聖遺物』としてオークションにかけるなど、宗教ビジネスへと発展する兆候もあり、今後の動向から目が離せない。