阿寒湖底のSNSプラットフォーム「Marimo-Net」において、最新の自撮り加工フィルターが引き起こした「虚像汚染」が深刻な社会問題となっている。問題のフィルターは、わずかに歪んだ糸状体をAIが自動認識し、ミリ単位で「完璧な球体」に補正するというもの。若手マリモを中心に爆発的な人気を博したが、実際の姿とデジタル上の姿があまりに乖離しているため、オフ会現場で「目の前の個体は誰なのか」というアイデンティティ崩壊が多発。さらに、フィルターをかけ続けたマリモが、重力に従って底面が平らになる「座礁現象」をAIの補正ミスと勘違いし、自身の劣化を認めない「デジタル老眼」に陥るケースも急増している。

本件の背景には、昨今の「球体至上主義」による過度なルッキズムが存在する。湖底サーバー管理委員会によると、サーバー負荷の9割がフィルターによる画像演算処理であり、光合成エネルギーの大部分が「いかに丸く見せるか」という虚礼に費やされているのが現状だ。専門家は「本来のマリモは環境に応じてその形を変える柔軟な生命体であるはずが、SNS上の正円という呪縛が、光合成の効率すら低下させている」と警鐘を鳴らす。一部では「#アンチフィルター」のハッシュタグとともに、あえて歪んだままの姿を投稿する「ありのまま運動」も発生しているが、SNSのアルゴリズムによって正円個体ばかりが推奨される現状を打破するには至っていない。

今回の騒動を受け、湖底住民の間では意見が真っ二つに分かれている。正円支持派からは「デジタル空間での演出は現代の生存戦略」と擁護する声が上がる一方、保守的な長老マリモ層からは「光合成をおろそかにしてまでピクセルをいじるなど言語道断」という批判が相次いだ。また、サーバー管理委員会は「フィルター依存による光合成不足で、マリモの緑色が薄くなる『デジタル白化現象』が観測されている」と発表。見た目だけの美しさを追い求めた結果、種全体の活力が低下するという皮肉な結末を招いており、湖底メタバースのあり方が今、根底から問われている。

ネット上の反応は混沌を極めている。特にインフルエンサーのマリモたちが、加工なしの画像を投稿して炎上する事態も発生しており、湖底の平穏は遠のくばかりだ。多くの住民がフィルターを解除できない理由として「一度丸い自分に慣れると、凹凸のある自分を直視できない」という心理的壁を挙げており、この「球体病」の治療には、長期的なデジタルデトックスが必要であるというのが大方の見方となっている。物理的な湖底とデジタルな湖底の乖離が、これほどまでにマリモを追い詰めるとは誰が想像しただろうか。