湖底の平和を脅かし続けてきた宿敵・マツモによる「強引な抱きつき戦術」に対し、ついに防御の切り札が登場した。これまで無防備なマリモたちは、体表面にマツモの茎を巻き付かせられ、強制的に光合成を阻害されるという悪質な嫌がらせに晒されてきた。しかし、阿寒湖のバイオ研究チームは、マリモが自身の外敵を忌避するために発する微量な化学物質を抽出・高濃度化することに成功した。名付けて『脱・抱擁(ハグ)スプレー』である。この成分を表面に塗布したマリモにマツモが接触すると、マツモ側が極度の不快感を覚え、即座に身をよじって離脱することが確認された。実証実験では、スプレーを散布したマリモの周囲半径10センチからマツモが完全に消失。「まるで湖底の結界だ」と話題を呼んでいる。

これまでマツモは、その柔軟な茎を利用してマリモの隙間に侵入し、擬態しながら養分を吸い取るという「湖底のストーカー」的振る舞いで恐れられてきた。マリモ側はこれまで、物理的に体を揺らす「激震防御」で対抗してきたが、これには多大なエネルギーを消費するため、長期間の防衛には不向きであった。今回の『脱・抱擁スプレー』は、マリモが本来持つ生体防御機能を拡張したものであり、副作用として「マリモの表面が若干ミントの香りがする」という付加価値まで付いてきた。今後は、全個体への自動散布システム「ドローン型・散布バブル」の配備が検討されており、マツモにとっては生存圏が急速に奪われる事態となっている。

世間からは「これでやっと安心して夜も光合成できる」「マツモが逃げ惑う姿を見て溜飲が下がった」と歓喜の声が上がっている。一方、一部の過激なマリモ主義者からは「化学兵器の使用は湖底の生態バランスを崩すのでは」と懸念の声も上がっているが、開発チームは「あくまでマツモが勝手に嫌がって離れるだけ」と強気な姿勢を見せている。マツモ側も対抗策として『粘着度強化型茎』の開発を急いでいるとの噂もあり、湖底の防衛軍備拡張競争は、さらなる泥沼化の様相を呈しているようだ。光合成を巡る戦いは、もはや物理的な接触を超えた、化学防衛戦の時代へと突入したのである。