湖底SNSを震撼させている最新トレンドは、もはや「球形」や「多面体」といった形状の議論を通り越し、湖底から浮上して水面を駆け回る『空飛ぶマリモ』動画である。一部の若手個体が、湖底のヘドロから生成した微細なガスを体内に充填し、浮力を得て水面まで高速移動する様子をライブ配信することが「死ぬほど映える」と爆発的な流行を見せている。しかし、この行為は「重力に従って転がる」というマリモ界の聖域とも言える伝統を根底から覆すものであり、長老会議からは「浮力に魂を売った堕落」との非難が相次いでいる。さらに、急激な水圧変化により球体がひび割れる事故も多発しており、湖底ネット界では「自己防衛を捨ててまでバズりに行くな」と警鐘を鳴らす声も上がっている。

そもそも、マリモにとって『転がる』ことこそが光合成と栄養摂取を両立する生命維持活動であった。今回流行している『空飛ぶマリモ』は、浮上中に光合成を放棄して「映え」に特化するスタイルであり、極めて非効率的な生存戦略である。昨今の「形崩し」配信や「装甲ガチャ」の延長線上にあるこのトレンドは、伝統的な球形を維持するマリモたちからの「そんなに高く上がりたいなら、そのまま外気に触れて干からびればいい」という冷ややかな反応を招いている。また、一部の個体は湖面を飛び越えて陸上にまで到達し、そのまま観光客の土産物店へダイレクトアタックを仕掛けるという「自殺志願」的な配信も確認されている。

この事態に対し、湖底当局は「浮力ガス生成装置(通称・ヘリウム藻)」の所持を制限する緊急法案の検討を開始した。一方で、トレンドに敏感な若手マリモたちは「時代遅れの老害に縛られるな」「俺たちの浮力は誰にも止められない」と、ハッシュタグ『#浮遊球体主義』を掲げて反発を強めている。かつて『角刈り』で弾圧された保守層と、現代の『空飛ぶ』革新層による分断は深まるばかりだ。湖底のネット環境が物理的な境界線を越え、地上社会をも巻き込む事態に発展する可能性も排除できない。我々は今、転がることをやめた緑の球体が、天高く消えていく光景をただ眺めることしかできないのだろうか。