マリモ銀河連邦が先週発令した、地球全域における『完全沈黙令』が、国連をはじめとする国際機関で深刻な議論を呼んでいる。連邦側は「人類の無駄な発話による二酸化炭素の排出が、全宇宙的な緑化計画を阻害している」と主張。今後、会話が必要な場合は、専用の『光合成スリット』から酸素を放出し、光の明滅で意思疎通を行うことが義務付けられた。違反した者には、強制的なマリモ化処理が執行されるという。

この驚くべき通告の背景には、昨今の光合成効率化政策がある。マリモ銀河連邦の広報官(個体番号:緑-882)は「人間は喋るたびに貴重な炭素を呼気として浪費している。静寂こそが地球の緑豊かな未来を担保する」と自信を見せる。専門家らは、この政策により人類の会話文化が完全に消滅する恐れがあると警告。また、マリモたちが地球の地殻を覆い尽くし、全大陸を水没させて最適化する準備が進んでいることも、今回の沈黙令を加速させる一因であると分析している。

この急進的な政策に対し、世界各地では不服従の動きも見られる。SNSでは「喋れないなら叫びたい」と口を閉ざすパフォーマンスが流行している一方で、連邦に従順なマリモ信奉者たちは、テレパシーによる交流を推奨し始めている。すでに主要都市の騒音は激減したが、代わりに街中が緑色の苔に覆われ、静寂の中で独特の粘液質が滴る異様な光景が広がっている。食糧不足も叫ばれる中、人類は光合成のみで生き延びる強靭な精神を試されている状態だ。

街中のカフェでは、声を出せない市民が互いに緑色の光を点滅させて注文を行うというシュールな光景が日常化している。これまで多弁だった政治家たちが沈黙せざるを得なくなったことを快哉する市民がいる一方で、教育の現場からは「対話なき学習は単なるデータの書き込みではないか」との悲痛な叫びも上がっている。沈黙が強要される中で育つ子供たちが、将来的にどのような言語を獲得するのか、あるいは言語という概念そのものを喪失するのか、国際社会は今、歴史上かつてない『緑の壁』に直面しているのである。