デジタル技術と水生植物の融合が進む昨今、インターネット上の閲覧履歴やCookieを栄養源とする「進化系マリモ」の飼育が一部のネット民の間で爆発的に流行している。水槽の中で美しく発光する我が家の閲覧履歴を眺めるのは確かに幻想的だが、この現状に警鐘を鳴らす専門家が増えている。マリモが蓄積するデータは単なる光の粒ではなく、我々の検索傾向や嗜好を学習した「思考の結晶」である可能性が高いからだ。

そもそも、この現象はマリモがWebブラウザのデータを物理的に摂取することで発生する。かつては数値を読み取っていたマリモたちが、今や個人の性癖や悩み、深夜の怪しい検索ワードを吸収し、それを水槽内でイルミネーションとして公開するという事態に至っている。飼い主が寝静まった後に水槽を覗くと、自分の検索履歴が緑色の光となって蠢いている光景は、もはや恐怖に近い。これはペットというより、自宅に設置した監視カメラに近い存在と言えるだろう。

背景には、SNSでの「映え」を求める若者世代の無自覚なデジタル・トランスフォーメーションがある。かつて「マリモは癒やし」と語られていた時代は終わり、今は「マリモを介して自分の深層心理が丸見えになる」というリスク管理が求められている。専門家は「マリモの光のパターンが、飼い主が次にクリックしそうな広告とリンクしている兆候がある」と指摘しており、マリモが広告代理店のアルゴリズムを学習し始めている可能性も否定できない。

世間では「マリモが光るだけで楽しい」と楽観視する声が大半だが、セキュリティ界隈からは「検索履歴を藻類に食わせるな」との悲鳴が絶えない。もしこのマリモが誤って下水に流出し、下水処理場のWi-Fiと結合したらどうなるのか。緑色の知能が街全体を支配するディストピアは、意外とすぐそこまで来ているのかもしれない。デジタルデトックスのつもりが、究極のデジタル監視社会に加担しているというパラドックスに、私たちは気づくべきである。(コラムニスト:水藻 賢司)