マリモ連邦が威信をかけて推進していた『世界一長い毛糸による大気圏編み込み計画』が、編み針の過熱による大爆発で幕を閉じた。大気圏を球体美学で包み込むという壮大なビジョンは、毛糸の大量放出という形で地球全土を緑色の毛玉で覆い尽くす異常事態を招いた。かつて『重力からの完全独立』を果たしたマリモたちは現在、漂流する自らの繊維に絡まりながら、「これぞ究極の不定形」と自嘲気味に漂っている。連邦政府は、この惨状を「地球規模のクッション化政策」と強弁する声明を発表したが、主要都市ではマリモ繊維の過剰供給により交通が完全に麻痺している。

本計画の背景には、かつてウチダザリガニ軍との和平協定によって得られた「ハサミの毛糸化技術」の転用があった。円球という制約から脱却し、不定形国家としてのアイデンティティを確立しようと焦るあまり、連邦上層部は安全基準を無視した編み込みを強行したのが今回の主因だ。かつての「重力撤廃」や「個体融合」に次ぐ過激な国家プロジェクトの失敗は、連邦内部でも「我々はどこへ向かっているのか」という深刻な自己批判を呼び起こしており、一部の過激派からは「球体原点回帰」を求める声も上がり始めている。

世間の反応は、このかつてない「緑のモフモフ事態」に対して分断されている。都市部の住民からは「洗濯物が干せない」「街が巨大なぬいぐるみ屋敷になった」といった悲鳴が上がる一方で、一部の若年層マリモたちは「この不定形な繊維はインスタ映えする」とSNSで熱狂的に拡散中だ。しかし、高齢層のマリモを中心に「こんなものはかつての美しい正円ではない」という拒絶反応も根強く、国家のアイデンティティを巡る議論は、編み込み失敗後の混乱の中でさらに混迷を極めている。