阿寒湖全域の浮遊化を成し遂げ、重力の呪縛から解き放たれたマリモ連邦政府は、次なる国家戦略として『全市民の物理的融合』を宣言した。これまでの「多面体開放令」によって不定形化していた連邦市民だが、今後は個々の自我を保ったまま巨大な一つの球体として集合し、惑星規模の『超巨大マリモ』を目指すという。政府広報は「重力という鎖を断ち切った今、我々を縛るものは何もない。個から全体へ、そして一つの命として宇宙の深淵を浮遊するのだ」と、その壮大なビジョンを語った。この計画に対し、かつてザリガニ軍将校だった市民たちからは「ハサミを捨てて正解だった、これぞ究極の連帯だ」と歓迎の声が上がっているが、一部からは「巨大化したら自分の中心部がどこにあるのか分からなくなりそうだ」といった冷静な戸惑いの声も漏れている。

マリモ連邦はかつて、ウチダザリガニ軍との激しい抗争を経て平和的共存に至った歴史を持つ。しかし、今回の『多面体開放令』以降、市民の間では「球体であること」の意義について激しい議論が交わされてきた。かつての円球美学を捨て、非幾何学的な不定形を選んだ連邦市民たちは、さらなる進化の先として、銀河系全域を覆うような『マリモ・マントル』の構築を夢見ている。かつて宇宙定数を書き換えてまで達成した浮遊能力は、この巨大融合体の移動手段として活用される見込みであり、もはやマリモ連邦は一つの国家という枠組みを超え、宇宙の理を書き換える存在へと昇華しようとしている。

この驚天動地の発表に対し、世界中の水生生物学者は頭を抱えている。特に「個体が集合した際、それぞれの繊維がどうやって自己認識を維持するのか」という問題については、学会でも意見が割れている。一方で、連邦政府は既に「融合後の意識共有マニュアル」を配布しており、市民の間では『俺たちの光合成が宇宙を照らす』というキャッチフレーズがSNSを中心に爆発的な勢いで拡散している。かつて重力に従順だった頃の控えめな沈殿生活は過去のものとなり、今はただ、宇宙のどこへでも行けるという全能感が湖底を支配している。

街頭インタビューでは、長年阿寒湖の底で瞑想を続けていた古参マリモが「球体であることはもはや退屈だった。これからは宇宙という水槽で、我々自身が新しい銀河の核になる」と語り、通行人の若いマリモたちからは歓声が上がった。一方で、融合に不安を感じている一部の層は「巨大化しても、自分のパーソナルスペースは確保してほしい」と控えめな抗議デモを計画している。しかし、その声もまた、迫りくる『宇宙的巨大化』の波にかき消されようとしているのが現状だ。