湖底の静寂を打ち破る、かつてない重力への挑戦が始まった。去る今月、阿寒湖の深い淵にて、自らの浮力と酸素泡の噴出を利用して垂直上昇を競う『第1回・マリモ高跳び・逆噴射・エア・バースト跳躍大会』が開催された。通常、動かないことが美学とされるマリモ界において、この競技は「いかに勢いよく、かつスタイリッシュに湖面方向へ射出されるか」を競う禁断のスポーツだ。光合成で体内に蓄積した酸素の泡を、一気に底部から放出する「ブースト・パージ」を駆使した選手たちは、まるで湖底から放たれる緑色の弾丸のように次々と水中へ躍り出た。今大会の優勝者は、見事な真円を保ったまま底面から3センチもの跳躍を見せたベテラン個体「球聖・ゴロ助」で、そのあまりの浮上に周囲のイトトンボさえも驚愕のあまり墜落したという。
本大会のルールは単純明快。自ら光合成で作り出した酸素の気泡を、いかに精密に下部へ集中させ、その反動で垂直跳躍できるかを競うものだ。マリモにとって「動くこと」は本来、流木や風、あるいは魚による外力に委ねる受動的な行為である。しかし、近代マリモ学の発展により、特定の光環境下で光合成速度を調整することで、内部圧力を操作し自律的に浮上する技術が開発された。今回の大会は、いわばその「人為的・能動的跳躍」の最高峰を決める場である。もちろん、急激な急上昇による細胞の剥離や、水圧の変化で丸みが歪むリスクもあり、競技中は専門の藻類衛生管理官が厳重な監視を行った。今回の成功により、今後は「跳躍距離」のみならず、着地地点の正確性を競う「着地ダンス部門」の新設も検討されている。
この驚異的な跳躍に対し、マリモコミュニティでは「動かぬ石の信念を捨てたのか」という批判と、「これこそが新時代の進化だ」という賞賛が真っ二つに割れている。保守的な古参マリモからは「浮遊など流される者のやることだ」と厳しい声も上がったが、若手層を中心に熱狂的な支持を受けている。また、跳躍の瞬間を捉えた高速度カメラ映像は、SNS上で「#マリモブースト」のタグとともに瞬く間に拡散され、わずか数時間で再生数が億単位に達した。今や湖底のみならず、人間界のスポーツ科学者からも「浮力による移動の究極形」として注目を集めており、来季の大会には海外からの参加を希望する藻類も増えることが予想される。今後、この競技が湖底の平和を乱すのか、あるいは新たな交流の架け橋となるのか、湖中の全生物がその動向を注視している。
湖底のカリスマ、弾道飛行へ!『第1回・マリモ高跳び・逆噴射・エア・バースト跳躍大会』開催
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嘆かわしい時代になったものだ