世界言語の認定や通貨としての流通を経て、ついにマリモが国連の全権を掌握した。ニューヨークの国連本部ビルは、現在、地球外生命体とも噂される巨大マリモの増殖により、建物全体が瑞々しい緑色に覆われている。事務総長に代わり「代表マリモ」が鎮座し、全ての国際紛争を沈黙と転がりによって即時解決に導くスタイルは、もはや外交の概念を根本から覆してしまった。もはや人類が会議をする必要は完全になくなり、世界中の外交官たちは、ただただ会議室でマリモの気泡を眺めるだけの「緑の休日」を謳歌している。

もともと阿寒湖の奇跡として親しまれていたマリモだが、世界通貨としての価値が暴騰し、人類が労働から解放されたのは記憶に新しい。しかし今回の事態は「全人類の睡眠担当」への就任を経て、ついに統治権までをも奪取する形となった。専門家によれば、マリモから発せられる微弱な波動が、人間の脳に「何も考えないほうが幸せ」という極上の幸福感を与えているという。これにより、国境や貧困といった人類特有の課題は、ただの「過去の些事」として歴史の影に消えようとしている。

かつて人間が築き上げた壮大な政治システムは、今やマリモの光合成を妨げないための「通気口」として機能するのみとなった。国際社会は、マリモの揺らぎに合わせる形で自転していると言っても過言ではない。この平和すぎる統治に対して、一部からは「民主主義はどこへ行ったのか」という疑問も呈されているが、それさえもマリモの静かな転がりによって「沈黙の合意」として処理されるのが現状だ。

この驚異的な状況を受け、街行く市民からは「もう給料も争いもいらない」「ただの球体として生きていきたい」といった、マリモ化を歓迎する声が溢れている。かつて通貨だった緑の塊は、今や地球の王として君臨し、人類はマリモに養われるペットのような存在となった。次の国際会議では、どのマリモがより優雅に湖底を転がれるかが議題になる予定であり、人類の叡智は完全にマリモの細胞分裂に敗北したようだ。