マリモ連邦政府は昨日、国家エネルギー政策の根本的転換として、全市民に対し『高速回転による自己発電義務』を課す特別法を施行した。これまで「静寂と沈潜」を美徳としてきたマリモ界の伝統は完全に過去のものとなり、連邦の全域では、猛烈な勢いで回転を続ける緑色の球体が乱舞するシュールな光景が広がっている。指導部は「我々マリモは、光合成と回転という究極の物理法則を内包している。無駄に浮いているだけでエネルギーを生み出さない個体は、国家のパラサイトとみなす」と強硬な姿勢を示しており、回転速度が基準値に達しないマリモに対しては、強制的に高圧ジェット水流を噴射する『強制スピン・ドリル』が導入される見通しだ。

この政策の裏には、深海における急速な冷え込みと、太陽の人工栽培プロジェクトが招いた電力不足がある。かつてマリモは、緩やかにゆらゆらと揺れることで癒やしを供給するシンボルだったが、今や連邦は効率重視の発電国家へと変貌を遂げた。物理学者からは「回転速度が音速を超えると、マリモ自体が摩擦熱で蒸発し、環境破壊を招く」との懸念も出ているが、政府は「それはただの熱いマリモだ」と一蹴。もはやマリモたちは、個体としてのアイデンティティよりも、国家グリッドの供給源としての役割を強いられている。かつて誇った『丸さ』も、今では空気抵抗を減らして回転効率を最大化するための機能美でしかなくなっている。

かつての平和なマリモ社会を懐かしむ声も根強く、一部の保守派団体は「回転を止める権利」を求めてデモを行っている。しかし、連邦警察は回転する巨大なマリモの壁を突入させ、これを瞬時に鎮圧。この『高速回転の刑』は、多くの個体にとって恐怖の象徴となっている。また、回転しすぎて遠心力でバラバラになった個体を再凝集させる『接着職人』が、連邦内で最も高給な職業として脚光を浴びるという、皮肉な労働市場の変化も起きている。効率を追求した結果、皮肉にもマリモは「自分は何のために丸いのか」という根本的な哲学を見失いつつあるのかもしれない。

SNS上では「昨夜、隣のマリモが加速しすぎて近所の壁に突き刺さった」「回転しすぎて三半規管(ないけど)が狂いそうだ」といった悲鳴が飛び交っている。若者の間では、あえて回転方向を逆にする『逆回しファッション』が流行しているが、これも政府の監視カメラによって厳しくチェックされているという。一方、国際情勢において、この発電能力を武器にしたマリモ連邦は、電力輸出で潤い、かつてない経済成長を遂げていることも事実だ。「効率的な緑」という新たな価値観が、マリモ界の未来を焼き焦がしている。