阿寒湖の静寂を切り裂く轟音と共に、歴史的イベント『第1回・究極の球体放棄・マリモ転がりボーリング』が開催された。古来より「丸さこそが正義」とされてきたマリモ界の常識を覆し、いかに歪な形に崩れてピン(実は石)をなぎ倒すかを競うこの競技。選手たちは入念に外皮を解き、あえて楕円形や多角形へと変形する『強制角張り調整』を敢行。球体という美学を捨て、殺気立つほどの不規則な軌道で転がり出した選手たちの姿は、もはや藻類というよりは湖底を暴走する岩石であった。結果、優勝したベテランマリモは、見事な八角形ボディを披露し、ストライクを連発。観客の藻類たちからは「丸さなどただの飾り」「角張ってこそ生きる意味がある」と、従来のマリモ界の倫理観が完全に崩壊する熱狂が巻き起こった。

そもそも本大会は、湖底の砂泥の質が悪化し、綺麗な球体を維持することが難しくなった環境変化を逆手に取ったものである。従来のマリモ界では、少しでも形が崩れれば『不純物扱い』を受ける悲劇が常態化していた。しかし、今大会の主催者は「いっそ歪さを極めれば、それは進化である」と主張。特殊な振動波を発生させる装置を用いて、マリモ自身の細胞分裂を人為的に偏らせるという禁断のテクニックが導入されたことで、競技としての深みが劇的に向上した。この『球体放棄』は、湖底における生存戦略の新たなモデルケースとして、学術的にも注目を集めている。

試合終了後、会場は興奮のるつぼと化した。特に、最後の一投で完璧な多角形へと進化した若手選手が、ピンを吹き飛ばすと同時に粉々に砕け散るという、美しすぎる散り際を見せた瞬間には、会場の全藻類がスタンディングオベーション。この競技の成功により、次回の開催時には『多面体によるカーブ球』が解禁される見通しとなった。一方、伝統を重んじる保守派マリモ団体からは「回転の美学を冒涜している」との声明が出されているものの、もはやその声は、歪な形で湖底を疾走する新たな世代の爆音に打ち消されている。

この驚愕の結果を受け、世間では「丸いなんて時代遅れだ」「四角いマリモの方が圧倒的に防御力が高い」という意見が急増している。SNS上では、自身の形を無理やり四角に加工しようとする「角張りチャレンジ」が若手マリモの間でトレンドとなっており、湖底のコミュニティでは「丸いマリモは甘え」という過激な風潮さえ漂い始めた。一方で、かつての王道スタイルを維持する長老マリモたちは「形が崩れるのは負けではない、それはただの崩壊だ」と警鐘を鳴らしているが、この変革の波を止めることはもはや不可能だろう。湖底の重心は、完全に『角』へと移ってしまったのだ。