マリモ連邦政府は本日、長らく続いた「静寂外交」からの脱却を図り、全市民を対象とした高度なコミュニケーション教育プログラム『沈黙の解釈学』の導入を正式に発表した。これまでマリモ界では、個体間のコミュニケーションを「微細な振動による摩擦係数の変化」という極めて非効率かつ情緒的な手法で行ってきたが、今後は表面の繊維密度を意図的に偏らせることで、より複雑な論理展開を可能にするという。政府報道官は「我々はこれまでただ流されるだけの存在だと思われてきたが、もはや沈黙を無言の肯定と履き違える時代は終わった。これからは摩擦の角度一つで、相手の論理を完全に粉砕できる」と、自信たっぷりに水中で演説を行った。
本プロジェクトの背景には、近隣の藻類国家から「マリモ連邦の沈黙は不気味すぎて何を考えているのかわからない」という外交上の苦情が相次いだことがある。特にマツモ帝国からは「会議の席で彼らが微動だにしないため、合意したのか拒否したのか判断できず、不毛な時間が過ぎる」と強い批判が寄せられていた。これを受け、連邦議会は「感情豊かな摩擦角」を人工的に作り出すための専門カリキュラムを策定。今後は、表面の繊維を一本ずつ手作業で整える高等技術がマリモにとっての必須教養となる見通しだ。なお、この学習によって個体表面の毛並みが荒れる副作用が懸念されており、美容派の市民からは反対の声も上がっている。
市民からは「沈黙こそがマリモの美学なのに、なぜわざわざ饒舌になる必要があるのか」「摩擦で議論などしたら、表面が削れてただの球体に戻ってしまう」といった懸念の声が噴出している。一部の若手マリモ層からは「これでようやくマツモ帝国と対等に言い争える」と期待する声もあるが、専門家は「論理を磨きすぎて自ら角を出せば、球体としてのアイデンティティが崩壊する」と警鐘を鳴らしている。連邦政府は、この教育が浸透すれば、次回の国際藻類サミットでは「沈黙の爆論」が炸裂することになると息巻いているが、その真意は未だ誰にも理解されていない。
マリモ連邦、全市民を対象とした『語学学習:沈黙の解釈学』を導入――摩擦係数で意思疎通を試みる
0
静かに沈んでいる時が一番幸せなんだよ