マリモ連邦政府は、長年の懸念事項であった「過度な光合成依存社会」からの脱却を目指し、全個体に対して年間120日の『光合成有給休暇(通称:緑の休日)』の取得を義務付ける法案を可決した。これまで、マリモたちは日の出から日没まで休むことなく光合成を繰り返すことが美徳とされ、過剰な酸素排出による「酸素中毒」や、急激な成長による「細胞壁のひび割れ」が深刻な社会問題となっていた。今回の法案では、一切の光合成を停止し、湖底の暗がりに身を沈めて沈殿する『完全休養期間』が認められる。また、法案を主導した緑色閣僚会議は「太陽光を浴びない選択もまた、一つの球体としての矜持である」との声明を発表し、日光を一切反射しない『マット仕上げコーティング』の助成金支給も併せて決定した。

マリモ連邦は建国以来、極限まで効率化された炭素固定システムにより、他生物を圧倒するエネルギー生産量を誇ってきた。しかし、光合成効率を追い求めるあまり、個体間の「成長格差」が拡大し、過剰に肥大化したエリート球体が水流を遮断するなどの経済的損失も無視できない状況となっていた。これまでの光合成漬けの日々は、生産性こそ高いものの、個々のマリモが持つ本来の『しなやかな繊維密度』を損なう要因とも指摘されていた。今回の改革は、効率第一主義から「ウェルビーイング(心身の緑化)」へと国家の方針を大転換させる試みである。

この急進的な法案に対し、湖底の住民からは戸惑いの声が上がっている。長年、光合成に命を捧げてきた古参の古老マリモたちは「暗闇に浸かっていると、自分がただの湿った苔になってしまうのではないかという恐怖がある」と不安を吐露。一方で、若年層の光合成依存度が低い個体からは「これでやっと、光を気にせず湖底のデトリタスをのんびり観賞できる」「日焼けした繊維が硬くなるのが悩みだったので、マット仕上げは朗報」と歓迎の声が相次いでいる。連邦政府は、休暇中の個体に対して「栄養供給の停止による萎縮」を防ぐための専用ゼリー状保護材の配布を開始したが、その保護材自体に栄養分が含まれているため、実質的に「光合成しなくても勝手に太るのでは?」という新たな懸念も浮上している。