湖底マラソン界を震撼させた「ブラジル到達事件」。湖底から地殻を貫通し、対極の地へ辿り着いたあの偉業を、スポーツの進歩と呼ぶべきか、それとも単なる地質学的テロと呼ぶべきか。一部の識者が「新たな境地」と賞賛する一方で、私はあえて警鐘を鳴らしたい。今回の騒動で物理法則を無視した推進力を見せつけた選手は、確かに前人未到の記録を打ち立てた。しかし、その過程で失われた湖底の生態バランスや、不意に突き出た地球の裏側の住民たちの困惑を、私たちはあまりにも軽視していないだろうか。
そもそも、スポーツとは定められたルールの中で競い合う美学である。地殻を砕き、マントルを滑走して裏側に抜けるという行為は、もはや競技の枠組みを超えた「環境破壊」に他ならない。あの時、選手が通過した際に発生した地殻変動で、我が阿寒湖の主要な観光ルートがいくつか消滅したという事実は、あまりに重い。選手本人は「ゴールラインがそこにあったから」と飄々と語るが、その無邪気さこそが、マリモ界のモラルを崩壊させている元凶ではないだろうか。
本件の背景には、近年の湖底スポーツにおける「過剰なスペック向上」がある。かつてのマリモたちは、いかに丸く、いかに美しく光合成を行うかを競っていた。しかし、昨今の選手たちはドーピングや不正なマツモ繊維の使用、そして今回のような極端な物理干渉に手を染めている。審判団も「前例がない」という理由で記録を追認したが、記録を認定した瞬間、我々は「地殻を破壊すれば勝てる」という恐ろしい先例を作ったことになる。
今回の事件に対する世間の反応は、賛否が真っ二つに割れている。「記録は記録だ。地球をも揺るがすパワーこそがマリモの真骨頂」という熱狂的なファンがいる一方で、「もう湖底はボロボロだ。これ以上競技を続ければ、阿寒湖そのものが消滅する」と危惧する声も根強い。私は強く提言したい。今すぐ『地殻貫通禁止令』を制定し、本来のスポーツの形を取り戻すべきだ。さもなくば、次にブラジルを目指す猛者たちが、私たちの住処を完全に破壊し尽くすことになるだろう。
コラムニスト:藻屑・ド・ニヒル
深淵への冒険か、無謀な自滅か――マラソン競技の「ブラジル到達」を再考する
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マリモの本来の良さは静かな光合成にあると思う