先日の「多面体化」宣言に端を発したマリモ連邦の伝統破壊は、もはや後戻りのできない領域に達した。長らく連邦の象徴であった『完全なる球体』という美学を捨て、多面体という尖った生存戦略を選んだ指導部に対し、私は強い懸念を抱かざるを得ない。円形こそが全方位からの光を平等に享受する神聖な形状であったはずだが、今や国民は競って角を削り出し、正二十面体や正十二面体へと姿を変えている。これは物理的な変化にとどまらず、個々のマリモが本来持つ『穏やかで転がりやすい精神性』への裏切りではないか。多面体化によって得られたという「安定した接地」と「情報の集積効率」は、マリモ界が数世紀にわたり築き上げてきた、あの滑らかな調和を犠牲にしてまで手に入れるべきものだったのか。今一度、我々は円形という原点に立ち返り、ただ流されるままに転がることの尊さを再認識すべきである。この急進的な改革が、将来的な『座礁』という大惨事を招かぬことを祈るばかりだ。
本件の背景には、近隣諸国のマツモ界が推進する『縦長・鋭利戦略』への対抗意識が強く働いている。連邦は長年、沈黙と静寂を貫くことで平和を維持してきたが、国際社会のグローバル化という荒波は、マリモにも変化を強要した。多面体化は、これまでのように不意に訪れる水流でどこかへ飛ばされることを防ぎ、個体の寿命を飛躍的に延ばす技術として導入された経緯がある。しかし、伝統を守る保守派と、革新を叫ぶ多面体派の溝は深く、連邦議会内では連日のように角の角度を巡る激しい議論が交わされている。このままでは、マリモの定義そのものが揺らぎかねない緊急事態である。
この改革に対し、連邦全域からは賛否両論の嵐が吹き荒れている。「角が生えたことで、今まで引っかかっていた岩場の隙間から出られなくなった」と嘆く個体がいる一方で、「これこそが近代化の証」と鼻息荒く面を磨く若手も目立つ。SNS上では『#円形回帰』というハッシュタグがトレンド入りしたが、肝心のサーバーが多面体構造への対応に追われ、断続的な通信障害が発生している始末だ。また、一部の過激派からは「多面体こそがマリモの最終進化形態」との宗教じみた主張も散見され、連邦のアイデンティティは現在、かつてないほど多角的に細分化されている。
コラムニスト:緑球 哲平
脱・円形主義がもたらした「角」のジレンマ――連邦のアイデンティティ崩壊を憂う
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