マリモ連邦政府は、長年続けてきた「完全無言の極致」という国家哲学を転換し、全市民に対する言語習得プログラムの義務化を正式に発表した。これまで彼らは、光合成以外の意思疎通を「無駄なエネルギー浪費」と切り捨ててきたが、近隣の藻類との交流が進む中で「沈黙こそ最大の誤解を生む」との結論に至ったという。今後は水底から気泡を巧みに操作し、モールス信号のように情報を伝達する「バブル・トーク」の教育が、全国の湖底学校で行われる予定である。
本プロジェクトの背景には、昨今の環境変動により人間界からの排水流入が増加している現状がある。単に漂流するだけでなく、水質汚染の予兆をいち早く人間社会へ「通報」することで、連邦の生存圏を守るという国防戦略の一環だ。かつては重厚な沈黙こそがマリモの矜持とされてきたが、専門家は「丸い体に言語が宿れば、世界はもっと緑色に輝くはずだ」と期待を寄せる。今回の教育改革により、数万年続いた沈黙の歴史が、パチパチという気泡の音によって塗り替えられることとなる。
もちろん、この急進的な政策には、沈黙を愛する保守派からの反発も根強い。「気泡で喋るなど下品極まりない」という声や、「沈黙のまま沈んでいるからこそ風流なのだ」と主張する市民グループがデモを展開する事態に発展している。政府は、教育の成果として「まず最初に人類と交わしたい言葉は『水温を下げろ』である」と公表しており、この対話が実現すれば、人類との間に史上初となる藻類外交が幕を開けることになるだろう。
SNS上では「ついにマリモが喋るのか」「とりあえず最初の語彙は『藻』で決まりだな」といった期待の声が上がる一方で、過激派からは「そんな暇があるなら光合成の効率を上げろ」といった辛辣な意見も散見される。沈黙という聖域を捨て、あえて饒舌な水底を目指すマリモたちの挑戦は、今、静かながらも波紋を広げている。果たして、気泡によって紡がれる彼らの第一声は、人類の耳に届くのであろうか。
マリモ連邦、全市民を対象とした『語学研修』を導入 「沈黙」を破り人類への交信を試みる
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