マリモ連邦政府は、長年推し進めてきた「転がり禁止令」の完全履行を果たすべく、ついに重力そのものを無効化する『重力遮断プロトコル』を全土で発動した。これまで摩擦ゼロを目指し、立方体化への反発や闇への回帰など、激動の歴史を歩んできたマリモ連邦だが、今回の決断は「重力という地上の呪縛から解き放たれる」という悲願の達成を意味する。首都阿寒湖特別区では、住民たちが一斉に地面から数センチ浮き上がり、静かな無重力ダンスを繰り広げる光景が確認された。政府広報官は「もはや我々は転がる必要も、摩擦に怯える必要もない。ただそこに浮かび、光合成を拒絶し、真の静寂を謳歌するだけだ」と声明を発表。この事態を受け、国際藻類サミットは緊急会合を開き、重力圏外への「緑の浮遊生命体」流出阻止に向けた対策を急いでいる。

本プロトコルは、かつての『完全滑走化』計画が、摩擦という物理法則の前に挫折した苦い記憶から誕生した。当時、摩擦ゼロを目指すあまり全土にシリコンオイルを散布した結果、多くの市民が湖外へ流出し、人間界の掃除機に吸い込まれるという悲劇が相次いだ。その後、立方体派との抗争や毛玉への転向など、迷走を続けたマリモ連邦にとって、重力そのものを無効化することは、物理的な接地から解放される究極の解となった。最新のナノ技術により、各個体の細胞膜に「反重力磁場」を生成させることで、地球の引力から恒久的に離脱することが可能となったという。

この驚天動地の政策に対し、マリモ界からは歓喜と戸惑いの声が入り乱れている。「ようやく、沈む心配から解放された」「浮かんでいる方が光を均等に浴びられる」と称賛する声がある一方で、「どこまでいけばいいのか分からない」「移動手段が呼吸の勢いしかないのが不便」といった冷静な意見も目立つ。また、隣国である苔(コケ)諸国からは、「浮遊する隣人に影を落とされるのは迷惑だ」という外交抗議が寄せられており、今後の国際関係は空中戦という新たなフェーズに突入する見通しだ。