マリモ連邦政府は、長年国民の基本行動として義務付けられていた「転がり」の強制を撤廃し、今後は「沈降」を奨励する新国家戦略『ディープ・フォール・ポリシー』を正式に採択した。これまでマリモたちは、円形を維持し、流線型を保つことで効率よく移動することをアイデンティティとしてきたが、今回の政策転換により、能動的な移動を捨て、水底で静かに堆積する『究極の定住生活』を目指すことになる。政府広報官のモッサリ・球氏は「転がる日々にはもう疲れた。流されるだけの人生に終止符を打ち、これからは自らの重さで深淵に根を下ろす。これこそが藻類としての究極のサステナビリティだ」と会見で語り、自身の体表から根のような毛をわずかに垂らすパフォーマンスを見せた。
この政策の背景には、昨今の水温上昇に伴う「無駄な転がりによる熱エネルギー消費」が深刻な問題となっていたことがある。計算上、マリモが一回転するごとに発生する摩擦熱は、連邦全体の水温を0.0001度上昇させており、これが近隣の魚類からの「暑苦しい」というクレームに繋がっていた。また、水底には過去に放棄された「立方体派」の残骸や、謎のプラスチック片などが堆積しており、それらと融合することで、より強固な多層構造体へと進化しようという狙いもある。国際藻類評議会はこの決定を「生存戦略の完全な放棄であり、同時に究極の省エネである」と高く評価しており、他国の藻類界からも注目が集まっている。
連邦市民の間では、この歴史的転換に対し、困惑と期待が入り混じっている。老練な個体たちは「転がってこそマリモだ」と伝統回帰を訴えるデモを繰り広げている一方、若年層の間では「沈むなら少しでも深いほうが映える」といったSNS上でのマウント合戦が過熱。一部の過激派グループは、沈降のスピードを競うために体内に砂利を詰め込む『バラスト・チューニング』を行い、逆に浮上してしまうという事態も発生している。また、この沈降政策の影響で、水面付近を泳ぐ魚たちからは「最近、水底がやけに騒がしい」「重厚感が出すぎて水景のバランスが悪い」といった苦情が寄せられており、連邦政府と魚類自治体との間で新たな摩擦が生じつつある。
マリモ連邦、国家の威信をかけて「転がり禁止令」を解除へ 重力に抗う新時代へ突入
0
感無量である