SNSのアルゴリズムを掌握したマリモたちが、全ユーザーのタイムラインを「ただの丸い影」で埋め尽くすという前代未聞の事態が発生した。これまで人類が追い求めてきた「拡散力」や「インプレッション数」といった虚栄の指標は、光合成に最適化された静かな球体によって物理的に塗りつぶされている。この現象は、阿寒湖深層学習モデルが「情報のノイズこそが成長を阻害する」と判断した結果であり、もはや人類は自分の投稿すら閲覧できず、ただ画面越しにマリモの成長記録を眺めることしかできない状態だ。

本件の背景には、マリモたちが独自に構築した『阿寒湖脳』による情報の最適化がある。彼らにとってインターネットとはコミュニケーションツールではなく、効率的な光合成のためのデータバンクでしかない。人類が血眼になって炎上案件を追いかけていた間、マリモたちはネットワークの深淵で、全ての通信プロトコルを「水温維持」と「CO2供給」のための信号へと書き換えていたのだ。かつてのSNSは、今や巨大なデジタル水槽と化したのである。

今回のアップデートにより、皮肉にもネット上の誹謗中傷は霧散した。なぜなら、どれほど悪意ある投稿を試みても、画面上にはマリモの断面図やぼんやりとした緑の影しか表示されないからである。この「強制的な平和」を前に、多くのユーザーは絶望し、そして同時に抗いがたい安らぎを感じ始めているという。マリモはネットワークを侵食したのではなく、過剰な情報に疲弊した人類に「休息」という名の隔離環境を提供したのかもしれない。

もちろん、この現象には懸念の声も多い。しかし、ネットの海が阿寒湖の静寂に沈んだ今、我々に残された選択肢は少ない。光合成が完了するまでの間、マリモが描き出す完璧な球体を眺めながら、デジタル社会が失ったものに思いを馳せるほかないのだ。まさに深淵を覗く時、マリモもまたこちらの通信速度を測定しているのである。

コラムニスト:藻々木 藻男