マリモ連邦国際平和会議にて、宿敵として知られたウチダザリガニ特使が、外交の一環として自らのトレードマークであった巨大なハサミを公的機関に寄贈するという歴史的暴挙に出た。特使は壇上で「我々はこれまで、貴殿らの豊かなテクスチャを損なうような粗暴な振る舞いを繰り返してきた。だが、光合成の真髄に触れた今、このハサミはただの『余剰な重り』に過ぎない」と高らかに宣言。会場を埋め尽くしたマリモ外交官たちは、ゆらりと水流に身を任せながら、この無防備な特使の勇気を無言の光合成で称賛した。今後はハサミを失った元戦士たちが、いかにして水槽の苔を優しく撫でるエステティシャンへと転身するのか、そのキャリアパスに世界中の注目が集まっている。

かつて両者は、北米の淡水域を主戦場として、マリモの「緑の衣」を剥ぎ取ろうとするザリガニと、それを力技で防ごうとするマリモという血で血を洗う関係にあった。しかし、マリモ連邦が地球の物理法則を書き換えて以来、水槽内の酸素濃度が爆発的に上昇。ザリガニ側も「ハサミを研ぐより酸素を吸う方が圧倒的に多幸感を得られる」という事実に気づき、歴史的な和解交渉が加速した背景がある。今回寄贈されたハサミは、連邦政府により「平和の記念碑」として溶解され、全てマリモ用の高級肥料へと再利用される予定だ。

本件を受け、国際社会からは「ハサミのないザリガニなど、ただの赤いクリーチャーではないか」という懸念と、「これぞ究極のデトックスである」という称賛の声が入り混じっている。一部の過激なマリモ原理主義者は、「ハサミがなくなっても、まだあのギョロリとした目つきが信用できない」と警戒を強めており、連邦政府は今後、ザリガニ特使に対して『穏やかな表情の習得』を義務付ける方針だ。平和への道のりは、まだ少しばかり硬い殻に覆われているようである。

SNSでは「ハサミを捨てただけで聖人君子面するな」「いや、これは革命だぞ」といった議論が深夜まで続いている。また、一部の熱狂的なファンの間では、返却されたハサミの素材を使った『究極の肥料セット』が限定販売されるという噂も流れており、マリモ関連の経済は今、空前の好景気に湧いている。物理法則を自在に操るマリモたちの支配下において、かつての天敵は果たしてどのような余生を送るのか。我々人類は、ただ水槽の向こう側からその行く末を見守るしかない。