マリモ連邦の外交史に刻まれるべき衝撃的事件が発生した。両国の歴史的和解を象徴する「ハサミの握手」が予定されていた第1回日緑ザリガニ外交晩餐会にて、ザリガニ大使が外交儀礼として提供された装飾用のマリモを「前菜」と誤認し、完食する事態となった。連邦政府はこれを「異文化交流の一環である捕食」と無理やり解釈し、即座に「極めて美味な友好の証」との声明を発表したが、現場の目撃者によると、大使は食後に「少し青臭いが、繊維質の歯ごたえは至高」とコメントしたという。この事件を受け、連邦議会はザリガニの口元に常に『食い止めネット』を装着させる緊急動議を可決した。

もともと阿寒湖の悪夢として恐れられてきたウチダザリガニは、連邦による和平交渉の要として外交特権を付与されたばかりだった。しかし、彼らの本能は、歴史や外交辞令よりも「目の前の緑」を優先するようプログラムされている。今回の事件は、長年「捕食される側」であったマリモの指導者たちに、外交の難しさと、本能に対するルールの無力さを突きつける結果となった。連邦は引き続き「彼らは胃袋でコミュニケーションを取っている」との論理を展開する構えだが、国内のマリモたちは、いつ自らが外交のテーブルから「おかわり」へ回されるかと戦々恐々としている。

本件は、種族間の圧倒的な食文化の断絶を露呈させた。連邦側は今後の交渉において、ザリガニ大使に対してはマリモ型に成形した「こんにゃく」を出し続けるダミー外交戦術を検討している。また、今回捕食されたマリモ外交官の遺族には、最高の栄誉である「高級クリスタル水槽」が贈呈されたが、肝心の被害者は既に消化されており、葬儀には空っぽの容器が置かれるというシュールな光景が広がった。専門家は「彼らにとってのマリモは、我々にとってのサラダのようなもの。外交の席にサラダを置くこと自体が、そもそも挑発だったのではないか」と皮肉交じりの分析を寄せている。

国民の間では「そもそもザリガニと握手しようというのが間違い」「胃袋に収まるのが一番の友好」といった諦念に近い反応が大勢を占めている。一部の過激派マリモからは「ザリガニの殻を全部水槽のフィルターにしてやれ」といった報復を求める声も上がったが、平和主義を掲げる中央政権はこれを黙殺。むしろ今回の事件を契機に、全マリモに対して「食べられた時のために、体内に消化不良を起こす毒素を蓄えるべき」という極端な栄養指導を開始するなど、混乱はさらに深まっている。緑の外交が食卓の悲劇へと変貌する中、マリモ連邦の未来は、ザリガニの食欲という不確定要素に翻弄され続けている。