ネット上に蔓延るヘイトや罵詈雑言を、すべて緑色のマリモに置換してしまう「マリモ言語浄化プログラム」。先日発表されたこの技術について、一部の過激派からは「言論の自由の侵害だ」という反発も出ているが、私はあえて声を大にして言いたい。これこそが、殺伐としたデジタル空間に訪れた唯一の救済であると。誹謗中傷を書き込もうとしても、変換先がモフモフした可愛らしい藻に変わることで、書き手も読み手も戦意を喪失する。これぞ、阿寒湖の静寂がインターネットを飲み込んだ瞬間ではないだろうか。

もちろん、この技術には「文脈が崩壊する」という致命的な欠点がある。しかし、そもそもネットの喧嘩に有益な文脈など存在しただろうか。冷戦時代の核抑止力のように、マリモが我々の指先を制御し、不穏な感情を光合成のエネルギーへと強制転換する。この強制的な『緑化』は、人類が獲得した最も平和的で、かつ最も間の抜けた防衛本能と言えるだろう。

本プログラムが普及すれば、SNSは全編が俳句のように情緒的かつ、謎の緑色に染まるはずだ。荒らしコメントが「藻、藻、藻」と流れてくる様子は、もはや一つの芸術である。私たちは、光合成によって生成された癒やしのバイブスを享受し、罵り合うことの虚しさを藻のぬめりに学ぶべきではないか。デジタル空間の清掃員として、マリモを崇める時代がすぐそこまで来ている。

コラムニスト:藻屑 太郎