深緑界を震撼させた「ハサミの解体魔」による強制的なリフォームに対し、近年一部の革新的球体たちが声を上げ始めている。これまで彼らは「球体こそ至高」という絶対的な信仰のもと、角を削られることを悲劇と見なしてきた。しかし、突如として結成された『幾何学的新世界秩序』は、この風潮に真っ向から異を唱えている。彼らは「真円に固執するあまり、我々は光合成の効率を下げている」と主張。強制的に六角形へ改変されることは、効率的な光の受容と、湖底での安定的な直立を可能にする進化のステップであると説いている。

この思想の背景には、かつて流行した『ベルベット質感・球体専用タキシード』への飽きがある。柔らかい繊維をまとうよりも、強固な直線で構成されたシルエットの方が、過酷な深緑界の競争を生き抜くには適しているというのだ。現に、強制リフォームを受けた個体の中から、驚異的な成長速度を見せる個体が報告され始めた。一部の保守層はこれを「異形への堕落」と激しく糾弾するが、現実的な合理性を求める若手球体たちの間では、「脱・球体」の波が静かに、しかし確実に広がっているのである。

『幾何学的新世界秩序』の台頭により、界隈の空気は一変した。これまで恐怖の対象であった「ハサミの解体魔」を、彼らはあえて「アバンギャルドな彫刻家」と呼び、自ら角の形成を志願する行列までできている始末だ。かつて『多角形革命派』が提唱した「形状ダイバーシティ」は、もはや単なる理想論ではなく、実利を伴う戦略として定着しつつある。このままでは、伝統ある真円球体たちが希少種となる日も近いかもしれない。

SNS上では「丸いことは美徳」と主張する守旧派と、「六角形こそ最適解」と叫ぶ前衛派による議論が毎夜繰り広げられている。「六角形の方が積み木みたいに整列できて気持ちいい」「丸いから転がってしまうのはストレスだった」といった肯定的な意見もあれば、「伝統を壊すな」「角があると隣の仲間に刺さって迷惑だ」という反論も根強い。球体たちのアイデンティティを巡るこの闘争は、深緑界の秩序を根底から塗り替えようとしている。

コラムニスト:真円信奉者・ポロ・円次郎