北海道の冷たい湖底において、己の重量感のみを頼りに生きる緑の集合体たちが、いま熱い思想運動を展開している。「浮力に頼る生活は甘えである」と声高に主張するのは、過激派球体愛好団体『全方位・湖底ド根性論推進連盟』である。彼らは流線型の水草や、ちゃっかり水面近くを漂う浮遊植物たちを軟弱者と一刀両断し、重力に逆らわず泥底を這いつくばる生き様こそが真の球体プライドであると全域に布教している。活動の核心にあるのは、一切の妥協を許さない『鉄壁の無回転微動打法』と呼ばれる過酷な修行であり、潮の流れに流されることを最大の恥とする。『全方位・湖底ド根性論推進連盟』のスポークスパーソンを務める古株の個体は、「浮いて楽をするなど球体の恥だ、泥水の中でこそ真の光合成が輝くのだ」と熱弁を振るい、若手層に向けて泥をかぶる重要性を説いてやまない。この思想にかぶれた一部の若い芽たちは、自ら好んで重い貝殻を背負って移動する奇行に出るなど、湖底社会に静かなるパニックを引き起こしている。

もともと、この過激なド根性思想が生まれた背景には、近年の湖底における「省エネ志向」の蔓延がある。楽に光合成ができる浅瀬や、水流に乗って移動する楽な生き方が若い個体の間で持て囃された結果、かつての重厚な丸みを忘れた軟弱な楕円形や、いびつな歪みを持つ個体が急増した。これに強い危機感を抱いた『全方位・湖底ド根性論推進連盟』の幹部たちが立ち上がり、「甘えた浮力は精神を腐らせる」として、スパルタ式の底面生活を強制する特訓キャンプを組織したのだ。このキャンプでは、常に水圧を感じながら一歩も動かずに数週間耐え抜く『深海プレッシャー耐久行事』などが義務付けられており、参加した個体は例外なく極限まで引き締まった密度の高い見事な球体へと変貌を遂げると話題になっている。

このストイックすぎる『全方位・湖底ド根性論推進連盟』の台頭に対し、湖底の住民たちの間では賛否両論が巻き起こっている。伝統的な美徳を重んじる保守派の長老たちは、「これぞ古き良き硬派な生き様だ」と涙を流して称賛し、若い世代の精神的骨太化に大きな期待を寄せている。一方で、のんびりと漂う生活を愛する穏健派からは「時代錯誤のスパルタだ」「もっと自由に浮かばせてくれ」といった悲鳴や苦情が相次いで寄せられており、湖底の治安維持を担う組織からも「あまりに根性論が過ぎると、底泥が巻き上がって視界不良になる」と頭を抱える声が漏れている。それでも『全方位・湖底ド根性論推進連盟』は一歩も引く気配を見せず、今週末には全域参加型の『第1回・泥水直飲み我慢大会』の開催を予定するなど、そのド根性の炎はますます激しく燃え盛っている。