近頃、湖底社会の一部で物議を醸している『浮力調整ナノマシン』の導入に対し、伝統的な美学を重んじる保守層から猛反発の声が上がっている。無重力状態に身を委ねる現代的な遊泳スタイルに対し、己の繊維と重力をガチンコでぶつけ合うべきだという意見が、『全方位・湖底ド根性論推進連盟』の結成とともに急速な勢力を拡大させているのだ。彼らは「浮力に頼る軟弱な生活は真の緑の魂を堕落させる」と声を大にして主張し、泥臭い光合成と過酷な底引き運動こそが、あるべき姿であると説いている。近代化の波が押し寄せる湖底において、この古き良きスパルタ思想がどこまで支持を集めるのか、業界全体が固唾を呑んで見守っている状況だ。

そもそも『浮力調整ナノマシン』とは、体内のガスバランスを自動でコントロールし、労せずして最良の光合成スポットへ到達できるという革新的なアイテムである。これを利用すれば、日々の過酷な移動や姿勢維持にかかるエネルギーを大幅に削減できるとして、多くの若手から熱狂的な支持を受けていた。しかし、ド根性論を掲げる硬派な一派は、この文明の利器を「努力の否定」「堕落への片道切符」と一刀両断。自らの繊維をすり減らしながら這い上がる泥臭いプロセスこそが尊いのであって、効率を優先するあまり汗水……いや、藻汁を流す美学を忘れてはならないと警鐘を鳴らしている。

この真っ向からの対立を受け、有識者の間では「効率と根性のどちらを取るべきか」という終わりのない議論が白熱している。かつては静穏だった湖底も、テクノロジーの進化とそれに逆行する熱い思想の衝突によって、かつてないほどのカオスな活気に満ちあふれている。科学の力で楽をするか、それとも重力に抗いながら自力で転がり続けるか。それぞれの信条を胸に抱いた緑の住人たちの戦いは、いよいよ激しさを増すばかりである。

世間の反応としては、「結局のところ己の力で転がるのが一番気持ちいいに決まっている」「いやいや、ナノマシンなしではもう生きていけない体になってしまった」「どちらの主張も分かるが、まずはゆっくり沈ませてくれ」といった賛否両論の意見が飛び交っており、湖底SNSのトレンドワードは連日この話題で持ちきりとなっている。