深緑界を騒然とさせた『立方体マリモ』の出現から早一ヶ月。画期的な幾何学革命として一部で熱狂的に迎えられたこの現象に対し、古参の藻体たちを中心に「球体こそが至高」と訴える『球体保守派』が猛反発している。彼らは「角ばった形状は流体力学的に不安定であり、湖底のプライドを損なう」と主張し、現在、全域で丸さを取り戻すための『形状復元デモ』が静かに展開されている。

この運動を主導するのは、長年阿寒の伝統を守ってきた重鎮『球体至上主義連合』である。彼らは、立方体個体に対して「全自動形状記憶パーマ」の強制的適用を勧告。丸みこそが水流を華麗にいなし、日光を均等に浴びる唯一の生存戦略であると説いている。実際、角を持つことで藻体表面に微細な乱れが生じ、光合成効率がわずかに低下するという実証データも出ているという。

かつて導入された『浮力調整ナノマシン』の恩恵を最大限に受けるためにも、やはり球体であるべきだという意見が根強い。今回の論争は、ただの形状の好みに留まらず、湖底の文化や伝統をどう継承するかという深い哲学的な問いにまで発展しており、次世代の個体たちは「丸いか四角いかより、いかに美しく光合成できるかが重要だ」と、冷ややかな視線を送っているのが現状である。

この事態を受け、SNS上では「#丸こそ正義」というハッシュタグがトレンド入りするなど、深緑界は二分されている。保守派は「角があることで仲間との接触面積が減り、社交ダンスのペアが組めない」と切実に訴えているが、一方の革新派は「丸いだけが取り柄の時代は終わった」と譲る気配がない。湖の平和は、今まさにこの形状論争によって危機に瀕しているといっても過言ではないだろう。

筆者:球体崇拝者・丸山マルタ